一口メモギャラリー

高山植物一口メモギャラリー

高山植物一口メモギャラリーは、 NPO法人 JAFPA(特定非営利活動法人 日本高山植物保護協会)の機関誌に連載された記事をまとめたギャラリーです。 (文・村松正文  絵・遠山若枝)


【アサマフウロ(フウロソウ科)】 No.54 

アサマフウロ(フウロソウ科)

夏の高原に咲き乱れる花の中で、フウロソウの仲間は常連と言っていいほど咲いている。タチフウロやミツバフウロの様に広い範囲に分布しているものや、特定の地域にしか分布していないものなど、変種を含めると約二十種くらいある。

アサマフウロは分布が狭いほうで、浅間山周辺や八ヶ岳山麓など本州中部に分布する。フウロソウの中では花が大きく径3cmから4cmもあり色は濃紅紫色で、一番鮮やかな色をしている。夏から初秋の霧ヶ峰高原や八ヶ岳山麓の清里高原や野辺山高原では、ほかのタチフウロやハクサンフウロの中でも際立った紅紫色で自己主張している。(文・村松正文 絵・遠山若枝)



【ツガザクラ (ツツジ科)】 No.53 

【ツガザクラ (ツツジ科)】 No.53 

高山植物のツツジ科は、キバナバナシャクナゲ、ハクサンシャクナゲ等を除けば、殆んどが20cm以下の小低木である。その中でもツガザクラ属の仲間は高山の岩壁、岩塊の隙間に生え、日本では雑種も含めて4種類成育する矮小低木である。

この仲間は非常に交雑しやすく、2種類以上が近くにあれば殆んどと言ってよいほど交雑種が出来る。特にツガザクラとアオノツガザクラの交雑種「オオツガザクラ」は、また他のツガザクラの仲間と交雑するので、幾種類もの品種が出来て同定が難しくなってしまう。しかも、オオツガザクラの別 名が「コツガザクラ」と言われては、ますます混乱してしまう。 ツガザクラの花は鐘形で浅く5裂して反り返り、先端が薄いピンク色している。葉は線形で長さ5~6mm、栂など針葉樹の葉に似ているため付いた名前だが、茎の下部は地を這って広がるため、せいぜい10cm~20cm位 である。

昔読んだ時代小説に中に「栂桜の木の下で果たし合いをした」と言うのがあったが、知らないというのも困ったものである。


【コフタバラン (ラン科)】 No.51

【コフタバラン (ラン科)】 No.51

ランの仲間は葉の少ないものが多く、極端なものは葉の無いムヨウラン、1枚しかないイチヨウラン、そして今回の主役フタバランなど節約型のものが多い。

フタバランの仲間は、茎の根元から少し上に三角形で1cmから2cmの葉が対生している小さなランである。亜高山帯の林床でコケの中に生え、淡黄緑色の地味な花であるため非常に見つけにくいが、不思議なことに1本見つけると眼が慣れるせいか、次ぎから次ぎへと見つかるものである。仲間のタカネフタバラン、ミヤマフタバランとの違いは、花が咲くとすぐに子房がふくらみ花の下が丸くなるので見分けやすい。

富士山では3種とも見ることが出来る。


【シラネアオイ(シラネアオイ科)】 No.50

【シラネアオイ(シラネアオイ科)】 No.50

登山シーズンが始まる少し前の梅雨の頃、ひと気のない沢沿いの斜面に、草丈に似合わず4センチほどの大きなピンクの花を咲かせる。思わず足を止めて見入ってしまう程きれいな花で、まるで園芸種のようである。

以前は、キンポウゲ科に分類されていたが、染色体の数や果実の裂け方の違いでキンポウゲ科から独立した「シラネアオイ科」とされ、1科1族1種の日本特産種となった。4枚の花弁のような花は実はがく片で、これはキンポウゲ科と同じである。

本州中部以北の雪の多い日本海側や北海道に分布している。ミヤマハンノキ林の林床や林縁、雪渓の縁で雪解けと同時にサンカヨウなどと一緒に咲いていることが多い。


【コケモモ(ツツジ科)】 No.49

【コケモモ(ツツジ科)】 No.49

高山植物の中には、これが木?と思われるほど小さなものが沢山ある、バラ科やツツジ科には多い。特に、ツツジ科ではキバナシャクナゲなど数種を除いて約30種が全て常緑の小低木である。

コケモモもそんな中の一種で、高さ5~15cm位にしかならない。亜高山帯の林緑や高山帯のハイマツ郡帯の根元などに多く生え、ほんのりピンクがかった白い鐘形の花を、枝先に数個付けているが、北海道の花は赤色の濃いものが多い。実は直径5~7mmの球形で赤く熟し花より目立つ。甘酸っぱい実は生でも食べるが、果実酒やジャムにすると美味しい。ツツジ科の小低木の中でも、コケモモをはじめスノキ属の数種はいずれも食べられる。

富士山では森林限界付近の林床にマット状に群生する事があり、ハマナシと言って昔から不老長寿の薬として珍重されていた。

因にコケモモのコケは小さいと言う意味で、コケリンドウ、コケスミレ、コケオトギリ、ムラサキサギゴケ等も同じである。


【サクラソウ(サクラソウ科)】 No.48

【サクラソウ(サクラソウ科)】 No.48

馴染みの深い花で有るが、最近野山で見かけることが少なくなった。元々山麓の湿った雑木林の林床などに咲く花であるため、ゴルフ場や、リゾート開発で生育地が狭められてしまった。八ヶ岳山麓の清里高原や野辺山高原などでは何処にでも有ったが、今は殆ど目に付かない。

ピンク色で5弁に見える花は、桜になぞらえて名前が付けられたが、花弁の下は筒状になっているので離弁花でバラ科のサクラとは縁の無い合弁科の花である。  古くから、荒川の河川敷などにも群生地があり、江戸時代の園芸ブームにはサクラソウの人気が出て、200種とか300種の品種が造り出されたと言う。今でも埼玉 県の田島ヶ原には群生地があり、国の天然記念物として保護されている。しかし、本来は山の夏緑林帯が育成地なので上流から流れ着いて居ついたものと思われる。

サクラソウの仲間は、北半球の湿帯から寒帯に分布し、特に中国東北部からシベリア東部の寒帯に多く、世界で約500種くらい有るといわれる。

日本ではこの仲間は14種11変種あるが、このうち高山で見られるものはクモイコザクラ、ハクサンコザクラなど9種類ほど知られている。


【ナナカマド】 No.47

【ナナカマド】 No.47

夏にはあまり目立たない木だが、秋の亜高山帯から高山帯では真赤に紅葉して存在感を示す。山の秋を知らせるTVニュースでは、たいていナナカマドの紅葉が放映される。実も赤く熟し葉が落ちてからも新雪が降る頃まで残り、初冬の山に彩 りを添える。

ナナカマド属には6種類あるが、私たち登山者が山でよく目にするのは、高山帯のハイマツなどと一緒に生えているタカネナナカマドと、亜高山帯から高山帯のダケカンバやミヤマハンノキ等の林縁に生えるウラジロナナカマドが多い。いずれも高さ1m~3mのバラ科の落葉低木である。

この2種の見分けはわりと簡単で、タカネナナカマドは葉の鋸歯が全縁にあり、枝先に10~20個の花、実は1cm位で垂れ下がってつく。ウラジロナナカマドは、葉の鋸歯が先端から3分の2位 しか無く、花は枝先に多数つき、実は1.2~1.5cmで上を向いてつく。


【マツムシソウ】 No.46

【マツムシソウ】 No.46

初秋の山の草原に咲く2年草の花。1年目は葉だけで翌年花が咲く。頭花は1つの花に見えるが、本当は数十個の花の集まり。周りの花弁は1つ1つの花で、中心は筒状の花の集まったもの。名前の由来は「松虫」の鳴く頃咲くからとか、昔巡礼が家々を回りお布施を乞う時、小さな鉦の音が松虫に似ているとか、マツムシソウの実はその鉦の形に似ていたからとか、諸説がある。

下界はまだ猛暑の8月下旬、高原ではかすかに秋風が吹き始める。その秋風に優しく揺れる青紫の花の波、夏の百花繚乱の花の競演が終わり、マツムシソウが咲き出すと秋の気配が高原に漂い始める。この花に会うために、初秋の山野を散策するという人が多いのも頷ける。


【キタダケソウ】 No.45

【キタダケソウ】 No.45

日本高山植物保護協会のシンボルなので、知らない人はいないと思いますが、富士山の次に高い南アルプス北岳南東斜面 にのみ咲く白い花です。しかし、標高3000mの高山で梅雨の時期、雪解けと同時に咲き出すため、あまり人の目にふれませんでした。発見され学会に発表されたのも大分新しく、昭和初期になってからでした。

花は2~3cmくらい、花茎の先に一花だけつけます。花弁の先がすこしへこみ、葉は細かく裂け、先端が丸みを帯びて重なるようについています。よく間違えられるハクサンイチゲは花茎の先の花は数個つき、葉は細かく裂け、先は尖ります。国内には同属に北海道のヒダカソウとキリギシソウがあります。

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