JAFPA NEWS(会報)

JAFPA NEWSVol61

2009年10月24日~25日 大井川源流 南アルプス100人会議
2009年10月24日~25日 大井川源流 南アルプス100人会議

新年のごあいさつ

可憐で貴重な高山植物保護に今年もがんばりましょう

会長 白簱 史朗

皆さん、お目出度うございます。
今年こそ、今年こそ、と思いながらも私たちの歩みは仲々進まず、願いは一向に目的に近づきません。ことに昨年からの不景気風が日本人の心と体を畏縮させ、何ごとにも消極的になってしまっているようです。
ですが、そうした中でJAFPAは例年の企画行動とともに昨年3月には長野県飯田市でのシンポジウム、そして10月には静岡市大井川椹島で「大井川源流南アルプス100人会議」を開催し、多くの人たちに私たちの考えと行動を理解してもらい、ともに行動することをうながすなど、例年にも増して積極的な動きを致してまいりました。
しかし、こうした自然保護に対する理解と行動を他にはたらきかけても、仲々に実を結ばないのが実情です。ですが、こうした地味でありながらもたゆまず行なってきた運動に、僅かながらでも効果があらわれてきたように思えます。最近は高山植物も人災だけでなく、ニホンジカの異常な繁殖によって、高山のお花畑が食害にさらされていることに、ようやく関係行政も重い腰を上げ、対策を確約してくれたことは大きな朗報です。ことに山梨県知事の横内正明氏は大きな力となるでしょう。
椹島の100人会議も、静岡新聞の社説で大きく取り上げてくれたことも、きっと良い方向に世論を引っ張ってくれるだろうと考えて、私たちも改めて心新たに皆さんと共にこの運動に取り組んで行きたいと思います。
どうか宜しくお願い申し上げます。


2009 大井川源流 南アルプス100人会議を開催

当協会は高山植物保護思想の啓発を図るためにさまざまな活動を展開しています。その一環として昨年3月14日、伊那谷で「伊那谷自然友の会」と主催し、飯田市美術博物館、長野県伊那谷地方事務所の共催を得て「高山植物保護シンポジュウム」を開催し大成功を収めました。
これに引き続き10月24・25の両日静岡支部の企画により通常のシンポジュウムと趣向を変え、参加者全員がパネラーとしての役割を担い積極的に発言し意見交換をすることにより、圧迫要因が多様化している高山植物の現状を知り、価値を再確認して、その保護対策を考えるため、南アルプス高山植物ボランティアネットワークとの共催により、静岡県、静岡市の後援を受け、「2009 大井川源流南アルプス100人会議」が多数の皆様の参加を得て、紅葉が進む大井川が作り出した山間の平坦地「椹島」で開催されました。

先ず始めに、日比野静岡支部長から開会の挨拶があり、パネリストだけではなく参加者の皆様の意見をたくさん聞かせていただき、実りある会議としたい旨の主催者としての会議の主旨が話されました。
引き続き白.会長より、20年を過ぎた当会の活動の経過が話され、ある一定の成果は認められるが相変わらずラン科を始め貴重な高山植物の盗掘が後を絶たず、加えて近年ニホンジカを始めとする野生動物による高山植物の採食が、その種だけではなく生態系まで変えようとしている現実が語られ、改めて早急な保護対策の構築と解決に向けて、具体的な実践活動の必要性が訴えられました。
来賓としてお招きした、宮澤泰子環境省南アルプス自然保護官事務所上席自然保護官からは、南アルプス国立公園の概要の説明、近年ニホンジカ等による食圧に対して国が取組んでいる仙丈ケ岳における防鹿柵、北岳での経路調査等の実績報告と現在建設中の広河原インフォメーションセンターの解説がありました。
次に熊崎実静岡県県民部理事より、南アルプス高山植物ボランティアネットワークに代表される静岡県の自然環境保護に対する取組みが紹介され、瀬本豊久静岡市環境局環境創造部長は、現在南アルプス世界自然遺産推進協議会の「南アルプス学術総論」、牛首峠からの赤石岳周辺を撮影するライブカメラの設置等について、静岡市の活動の様子が話されました。
狩野謙一静岡大学理学部教授は、植物は専門外だけれど、生育している環境である南アルプスの地質や地形について、世界自然遺産に登録するためのクライテリア8を満たすための、陸上に持ち上げられた付加体、島弧と火山弧の直交衝突等から南アルプスの世界一級レベルの隆起と温暖多雨な気候によって急速に浸食され地形が活発に変化している状況が易しく説明され、改めて南アルプスの価値を見直すことができました。
最後に(財)自然保護基金の岡本寛志氏より自然保護に対しての補助金、助成の平成20年、21年の実績報告がなされ、南アルプスの異常事態をどうするのか、このままの状況が続けば、生物多様性は崩壊し世界から「日本は何をしているのか」といわれかねない。早急に行動すべきである、そのためにも自然保護基金を有効活用して欲しいとの提言がありました。
このあと、静岡県自然保護室の遠藤氏より、静岡県が取組んでいる、茶臼岳、聖平、三伏峠、塩見岳、北荒川岳等の状況報告があり、白.会長を座長に自由討論が行われました。

  • 自由討論では参加者から次のような意見、報告、提案がありました。
  • キタダケソウやタカネマンテマの大株が極端に減少している。
  • このまま放置すればやがてキタダケソウも全てニホンジカに食べつくされる。
  • 現在は残っているトリカブト、マルバダケブキもやがては食べ尽くされる。
  • 森林被害の大きい伊豆半島では年間5000頭のニホンジカを捕獲しているが個体数が減っていない。妊娠率が80.90%と 高く、気候がシカの繁殖に適しているのではないかと思われるが、詳しいことは不明である。
  • 行政では野生動物に対するあらゆる情報を収集しているので、協力して欲しい。
  • 本年度櫛形山の指導者研修会に参加して、アヤメ、ヤマドリゼンマイの採食や表土流出の状況を見て驚いた。
  • 高山だけではなく52号線へのシカの出没情報が寄せられている。
  • 富士山麓から高山帯までシカが出没している。また、クマはキノコを好んで食べているので人里まで降りてくる。
  • シカの狩猟に対して報奨金をもっと上げることが必要である。
  • シカの捕獲は銃だけではなくワナをもっと普及させるべきである。
  • 冬に山を降りてきたシカを越冬地で大量捕獲する方法を採用したらどうか?
  • シカ肉は食用部分が20%くら いしかなく、腐りやすいために食用肉としての普及は難しいが、課題を克服して普及に努めるべきである。
  • シカの天敵であるオオカミを放獣したらどうか。
  • 丹沢でのシカによる「ヤマヒル」の被害が報告されている。
  • シカの生態系の掌握が必要である。
  • 林道沿いの斜面に常緑の草を植えているためにシカの冬の貴重な食料となっていて、冬山から降りてくる必要がなくなって亜高山から低山に移動しない。
  • ニホンジカの問題に対して行政は調査研究に取り組みはじめているが、個体数の調整や具体的な捕獲に腰が引けている。早急に捕獲しなければ、日本の高山植物だけでなく自然環境は壊滅的な打撃を受ける。
  • シカの食害にさらされている住民がこのように悲痛な訴えを行政に届けても、まだ重い腰を上げないとしたら、貴重で美しい日本の生態系壊滅の責任を誰がどうして取るのでしょう。

等々活発な意見交換がなされ最後に「世界に冠たる美しい日本の自然環境を守ってゆくためには圧迫要因に対して一刻も早い適切な対応が必要である。」との結論を得て、厳しくなる保護環境のなかで、参加者一同心を一つにして高山植物を守ってゆくことを再認識しました。

◇ ◇ ◇ ◇

 最後に高橋事務局長から、出席された皆様とこの会議開催のためにご尽力いただいた関係者へのお礼と、当協会発展のために努力を重ねてゆくことの決意が述べられました。
このあとの交流会では更なる意見交換がなされ、「2009大井川源流南アルプス100人会議」は大成功を収め終えることができました。

JAFPA本部事務局 塩沢 記

南アルプス100人会議 オプショナルツアー転付峠登山に参加して

昨夜の雨はあがったが、未だ、霧が周囲の山々の頂部分を包んでいる。しかし、しっとりと落ち着いた爽やかな朝である。
私達参加者は二十二名で、案内役は、静岡支部の望月事務局長が担当された。
転付峠は、大井川源流と山梨県早川町をつなぐ交通の要所で多くの人々が往来した歴史のある峠である。
先ずは、椹島から二軒小屋まで送迎バスに乗り出発。大井川沿いを木賊橋、大尻橋などを経由して基幹線林道を走る。周囲の山々は、今が紅葉の見頃で紅葉やかえでが松の緑と配色よろしく車窓の左右に拡がる景観はすばらしく、参加者から感嘆の声があがる。
約30分ほどが経過して、二軒小屋に到着。早速、準備体操で身体をほぐし山登りを開始する。
転付峠までは2時間30分位の所要時間をみて、ゆっくり登る計画である。
この登山道は道幅も広く良く整備されており、傾斜もゆるやかで歩き易い。
昔から、この峠を越えて荷物を背負って往来があったことを考えると納得できる。
周囲の紅葉を賞でながら樹林帯を登る。しばらく登ると登山道が紅葉で敷きつめられている箇所などもあり、その鮮かさにシャッターを切る音が続く。
途中、黄色がまばゆいほどに色づいた明るいカラマツ林を眼前に休憩をとる。天気はあまり変化はなく周囲の山々の山頂部は雲に覆われているが雨が降る気配はない。
やがて、先頭を歩く望月事務局長が峠が近いことを告げる。
間もなく、広く平らに開けた転付峠に到着。所要時間1時間45分と速い。この峠は、木立に囲まれており展望はあまり期待出来ないが、晴天には樹間に千枚岳の雄姿が見えるとの話である。今日は、霧にさえぎられて全く見えない。このため、晢く休憩し、転付峠の標柱を囲み、全員で記念撮影をして下山することとする。
下山途中、100人会議のシンポジュウムの中で熱い議論のあった鹿が突然現われ樹林帯に消えて行った。
改めて、植生の保護対策の強化が必要との感を深めた。
健脚揃いのメンバーのためか予定より早く二軒小屋に全員無事下山することが出来、すばらしい山行ツアーであったと思う。静岡支部の皆様のご尽力に心から感謝します。
ありがとうございました。

JAFPA本部事務局長 高橋 記

高山植物一口メモ[ムカゴトラノオ(タデ科)零余子虎の尾]

チングルマ(バラ科)
ムカゴトラノオ(タデ科)

 今年の干支は寅年ということで、トラの名の付く植物を探すと伊吹山の名がついたイブキトラノオ、早池峰山のナンブトラノオ、そしてムカゴトラノオがあります。花序が虎の尾のような形をしているというがどうでしょうか?
ムカゴトラノオは北海道と本州中部地方の高山帯に分布し、南アルプスが南限です。
お花畑の縁や登山道の脇などに咲いていますが、最大の特徴は、花の下部に珠芽(ムカゴ)をつけ、地面に落ちると親と同様に育ちます。
【余談】  その他山地にオカトラノオ(サクラソウ科)、私はこれが一番虎の尾に似ていると思っている。
私の住んでいる富士市の湿地帯には、ヌマトラノオ、サワトラノオ、いずれも(サクラソウ科)があります。
寅年ということで、トラノオの植物を探して歩いて下さい。


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