JAFPA NEWS(会報)

JAFPA NEWS Vol.66

高山植物フォトコンテスト最優秀賞 「雪間のフクジュソウ」
高山植物フォトコンテスト最優秀賞 「雪間のフクジュソウ」 高橋英子(東京都大田区)

わたしたちにできること、できないこと

関西支部長 小谷 哲朗

本誌にもたびたび報告されているようにシカの食害がますます深刻になっています。防鹿柵の内側と外側で植生が明らかに異なる写真やセンサーカメラで撮ったシカの採食行動の様子を見ると、シカの食圧による被害の甚大さがわかります。仙丈ヶ岳や三伏峠、さらに聖平など南アルプス各地の高山植物群落が壊滅状態になっていると聞きます。

シカが本来の生息域を越えて高山帯へ侵出してきた背景にはいろいろな要因が考えられるようですが、シカがそこにいてはいけないのは確実ですから、防鹿柵を設置することで貴重な植物群落を守りながら、将来的にはシカが来ないように、防鹿柵がなくてもいいようにしていかなければなりません。そこにいてはいけない生物が侵入してくるということは自然の機能がすでに失われているということで、人為的な手を加えなければいけない段階に来ているということです。シカの個体数調整の必要性もそこにありますが、高山帯に入ってくるシカを駆除するにはJAFPAだけの対応では難しい面もあります。また、関係省庁、市町村や他団体との協調、広く理解を得るためには一般にも訴えていく必要があると思います。

高山植物を守るために個人でできる簡単なことはいくつもあります。山を歩きながら、植物を採らない、踏み込まない、ストックや三脚を植物の生えているところにつかない、立てない、温暖化等の環境要因も大きいわけですから環境保全のために普段からこころがける等々。私たち関西支部会員の大多数がそうですが、例えば防鹿柵の設置活動等に直接参加したくてもできないという者であっても、JAFPAの会員であることによって間接的に参加していると考えることができると思います。高山植物への愛着と守りたいという思いをもちJAFPAの活動に会員として加わってくれる人を増やしていきたいものです。


平成23年度通常総会を開催

平成23年6月5日(日)、昨年に引き続き東京の都市センターホテルで、午前10時から理事会、午後1時30分から平成23年度通常総会が開催されました。

理事会では、通常総会への提出議案について審議されました。

平成元年に日本高山植物保護協会が設立されてから23年が経過し、会員の高齢化とともに退会者が増え、新規加入者もいるものの会員は年々減少、今年度は、これまで基本財産として積立ててきた積立金1千万円余りから、初めて38万円を取り崩し活動費に充てなければならなくなった状況の中で、会員の加入促進をどのように進めるかについて、熱心に話し合いが行なわれました。

通常総会は、高橋事務局長の司会で始められ、白.史朗会長はあいさつで、「会員の高齢化が進んでいるためか総会への参加者が減少している。このような中で、本日参加いただいた皆様にはたいへん感謝している。」と感謝のことばを述べるとともに、「相変わらず自然破壊が進んでいる。悲しいことだと思う。経済的にも厳しい状況となっているが、とにかく出来る限りのことをしていきたいと考えている。これからも皆さんのお力を貸して頂きたい。」と訴え、会員の皆様に協力を要請しました。

次に来賓としてご臨席いただいた環境省自然保護局野生生物課保護増殖係長 横田寿男氏、山梨県知事代理 山梨県森林環境部次長深尾嘉仁氏、国立公園協会理事長油井正昭氏からご祝辞をいただきました。

副会長に小谷哲朗氏、木内祐二氏を選任

来賓祝辞の後、議長に日比野静岡支部長が選任され議事に入りました。第1号議案(平成22年度事業報告ならびに決算報告の承認に関する件)、第2号議案(平成23年度事業計画ならびに収支予算案の承認に関する件)は、原案通り承認されました。

第3号議案(役員の退任及び選任に関する件)では、一身上の理由で退任の申出が出されていた花岡利幸副会長、山角郁男副会長、飛田貞夫理事の3氏の退任が承認され、新たに西山邦雄氏、青井孝久氏、増沢武弘氏の3氏が理事に就任されました。また、これまで理事であった小谷哲朗氏(関西支部長)、木内祐二氏(昭和大学北岳診療部支部長)の2氏は、それぞれが所属する支部の支部長ということで退任された副会長の後任に選任されました。

総会議事終了後、古沢なつき会員より、総会決議案が朗読され満場一致で採択されました。

続いて恒例となりました高山植物フォトコンテストの入賞者に白.会長から盾と賞金が贈られました。(入賞作品は、当情報紙No. 66号の1面と12面に掲載。)

通常総会の記念講演では、当情報紙に「南アルプスにおける植生復元活動」と題して、既に11回にわたり南アルプスにおける植生復元活動の状況を報告していただいている静岡支部の鵜飼一博氏が講師となって、復元活動とその活動結果、回復の様子をスクリーンを使って、分かりやすく興味深い講演が行われ、平成23年度の総会が成功裡に終了いたしました。


櫛形山にアヤメ戻る・・・

南アルプス市 みどり自然課 広瀬 和弘

今夏200花以上が

山梨県自然記念物に指定されている櫛形山のアヤメ保全対策を始めて3年目の昨夏、ネットの保守点検で現場を訪れたところ、ネット越しにちらほら紫色の花が見えたことを今も鮮明に記憶している。1年目、2年目と葉高を伸ばし体力を回復してきたアヤメに対して開花の期待は検討会メンバー一同高まっていた矢先のことだった。ようやく櫛形山に紫紺の花が戻ってきたのである。2010(平成22)年では、約40花咲いたアヤメが今夏一気に200花以上が咲いた。前年比5倍強の成果があがったわけである。

本市では2007(平成19)年、山梨県の自然記念物である櫛形山のアヤメの急激な開花減少を受けて櫛形山アヤメ保全対策調査検討会を設置し、その減少要因について植生調査、過去の資料調査、野生動物の出現調査等さまざまな角度から調査を行ってきた。

今だからニホンジカの短期的集中的な摂食がアヤメの開花に影響を与えていたことが判明したわけだが、当時は全く手探りの状態で保全対策を始めた。外的要因を除去しながら植生調査を実施し、その推移を見守ったのである。

現在、裸山、アヤメ平には最大で60m×60mの食害防止ネットを設置したほか、小規模ながらもいくつかのネットを設置している。

総設置面積は約4600㎡。今年度は新たに県森林総合研究所による研究課題による新設が予定されている。

今後はネット内の植生環境をどう復元していくのかが大きな課題である。明確な目的と目標。なぜ復元しなければならないのか、仮にニホンジカが急増したことが一因であれば、その背景はなにか、私たちは単純な動機でひとつひとつの現象に対処するのではなく、私たち人間、そして社会が自然にどんな影響を及ぼしてきたのか、改めて確認して作業を進めなければならないだろう。

自然の連鎖に感銘

個人的にはアヤメが咲いたことにとても感慨深いものがあったが、それ以上に感銘を受けたのは、様々な植物が花をつけ、その花を目指して希少な蝶類が戻ってきたことに自然界の連鎖を見たことだ。多種多様な野生動植物が共存共栄することがどれほど素晴らしいことか。そして、保全対策にあたって地域の方々の惜しみない支援が何よりも頼もしい。

また、本年櫛形山は山と渓谷社の「日本山岳遺産」の認定を受け、櫛形山で活動するさまざまなグループや個人からなる「櫛形山ネットワーク」が中心となって櫛形山の魅力さがし、魅力づくりをテーマに事業を展開している。地域の人たちが汗をかき、体力を蓄え、地力を発信する・・そんなシステムがきっと多くの人たちを魅了するはずである。

昭和47年、旧櫛形町で第1回のアヤメ祭りが開催された。実は当時の新聞記事には、すでに「アヤメが減っていく傾向にある・・」とある。その時代、そのときの持続的な調査があれば未来の自然環境の変化にも即応できる。「知らないうちに、気づかないうちに」自然は刻々と姿を変えている。見続けることが地域力そのものになる。

これからも本検討会では、「櫛形山の保全対策」として持続的な調査を続ける。まだまだ予断を許さない。


第3回南アルプス100人会議

第3回南アルプス100人会議が次により開催されます。

期日 平成23年10月1日(土)~2日(日)
開催場所 静岡市葵区大字田代字鳥森周辺(通称「椹島」)
募集人員 100人
費用 参加費 13,000円
千枚岳登山 10,000円
交通費  7,000円
(静岡駅からバス利用)
その他 昨年の千枚岳登山は、高山植物が豊富に咲いていましたが、今年は、千枚岳の紅葉が最も美しい時期に設定しました。ウラジロナナカマドの紅葉と、富士山の対比は格別です。
詳細は、次にお問い合わせ下さい。
問合せ先 南アルプス高山植物保護ボランティアネットワーク
事務局長 中村隆哉
(090-4860-2111)

フォトコンテスト 入賞作品(全七点)

最優秀賞「雪間のフクジュソウ」高橋英子(東京都大田区)は、表紙に掲載させていただきました。

優秀賞 「クルマユリ」
海野 淑子 (東京都府中市)
優秀賞 「鳥海山お花畑」
大内 京子(千葉県我孫子市)
入選 「ワタスゲ群落」
村野 長市(千葉県野田市)
入選 「チングルマ冠毛」
高橋 紀久雄(東京都文京区)
入選 「ホテイラン」
中山 厚志(長野県佐久市)
入選 「サワギキョウ」
大平 昭善(東京都府中市)

高山植物一口メモ[センリョウ科・センリョウ属]

カイサカネラン(フタリシズカ(二人静)センリョウ科・センリョウ属)
フタリシズカ(二人静)・(センリョウ科)

 一人静は早春に花を咲かせますが、こちらは晩春から梅雨の頃に白い花穂の美しい花が咲きます。葉は上の2枚が対生、下につく2枚は上葉より下にしっかりづれて対生についています。色は一人静の濃緑でつやつやしているのにくらべ、二人静は黄緑色でつやがない。
 「ひとりもの(一人静)は色つやがよく、ふたりもの(二人静)は色あせる」といわれる。
 花は萼の花弁もなく裸花です。花穂はふつう2本だが、時に1~6本のこともあり、変化に富んでいます。花穂が何本あるか楽しみながら歩くのもいいですね。(文と写真 田中洋子)


皆様からのお便りを募集しております

情報誌JAFPAへ掲載する会員の皆様からの便り「会員からの便り」を募集しています。

文字数は、600字程度で、写真もありましたら一緒にお送りください。「便り」には、会員番号、氏名、住所を必ず記載してください。なお、応募いただいた作品、写真はお返しできませんので、ご了承ください。


JAFPA会報誌をダウンロード

JAFPA会報誌をダウンロードいただけます。全文確認されたい方は、ダウンロードしてご利用下さい。

JAFPA会報誌全文ダウンロード
このページのトップに戻る