JAFPA NEWS(会報)

JAFPA NEWS Vol.73

写真提供:南アルプス市 北岳山荘
写真提供:南アルプス市 北岳山荘

至難の道たりとも 吾等、共に歩まん

会長 白簱 史郎

日本高山植物保護協会員の皆さん、平成25年も暮れ、26年の新しい年を皆さんと一緒につつがなく迎えることができましたことを慶びたいと存じます。昨年はに6 月20 日に私たちの愛する富士山が世界遺産として指定され、誠に慶ばしい年でありました。しかし、私たちの使命として努力しております高山植物保護の目的に関しては、更に前途多難な年でもありました。

その第一に挙げますのは、日本中の山野にわたって増殖している野生のニホンジカの食害であります。北海道から本州東北、関東から関西、四国、九州、沖縄にまたがるすべての山野に跳梁するニホンジカの群れに、各地のお花畑はほとんど食い荒され、貴重な高山植物は根こそぎといえるほどに姿を消してしまって居ります。

ですが、自然を愛する当会会員の方がたや直接に害獣駆除にたずさわる人たちのたゆみない努力によって、僅かではありますが、その効が見えてきたことは、本当に喜ばしいことに思われます。

しかし、まだまだ直接に不法採取する人や人力の及ばない遠方の地域では、見るも無惨な状態となったところが多々あります。

私たちは小成に甘んずることなく、さらにさらに貴重な高山植物保護の精神に則っとりニホンジカ、ニホンザルの食害から日本の自然を護るべく一層の努力と実施に努めなければならないと考えます。ひとりひとりの力は小さくとも、全員が力を合わせることによって、いつかは日本の山野にかつての美しさを取り戻すことは決して至難のわざではないと考えております。

昨年も数多くの山に登り、現実にニホンジカの群れがお花畑を食い荒し、踏み荒した現場を見、ニホンザルが北アルプスの3000 メートルの稜線近くのお花畑で花のつぼみを片端から摘んで食べ、ライチョウの後を追いまわして捕食している現場に何度も遭遇しました。また、そうしたシカやサルに、食物をあたえる登山者のグループも2、3 ではとどまりませんでした。そうした現場で敢えて、その行為をやめて欲しいと申し入れても、ほとんどが馬耳東風、中には逆に食ってかかるグループさえありました。

私たちの自然保護、高山植物保護は、実際にその場に遭遇し、たずさわることによっていかに至難な目的であり、行動であるかを痛感させられます。

ですが、この行為がたとえ賽ノ河原の石積みであろうとも、私たちは敢然としてこの道を進まなければと、心を新たに強く持って行きたいと考えます。

どうか会員の皆さん、たとえどうであろうとも、心を強く持って進もうではありませんか。

年頭にあたっての考えを申し述べました。どうか皆さん、宜しくお願い申し上げます。


キタダケソウ保護の為に有意義に活用された環境協力金

南アルプス山岳交通適正化協議会の取り組み

キタダケソウの自生地の中で最も高い箇所の吊尾根分岐から上部の保護地がまだ160m余り崩壊防止の整備がされずに残っていた。ここも何とかしたい、そうでなければ一連の作業に区切りがつかない。昨年、一昨年と環境省のグリーンワーカー事業で北岳南東斜面のトラバース分岐〜吊尾根分岐の間300 mの区間頂上直下の崩壊のため、流されたり埋もれゆくキタダケソウに救いの手が伸べられた。登山者からは「とても歩きやすいよ」「株の流出も抑えられているね」「自然にやさしそうだね」そんな生の声が現場で聞こえる。だから、未整備地を何とかしたい。しかし環境省のGW事業は終わってしまった。山梨県の管理下にある登山道に沿ってはいるが、年間の整備費ではとても足りない。こんな状況を好転させたのが、JAFPA機関紙No72 号で紹介した「南アルプス山岳交通適正化協議会」でした。協議会では、マイカー規制管理経費として入山者からいただいている協力金の一部を自然環境整備に充当すべく、現地調査等の作業後、地元で北岳の環境をよく理解しているNPO法人芦安ファンクラブへの整備業務委託が託された。
 
例年より少し遅いスタートであるが、何とか冬季前に仕上げるために準備が始まった。県産材円柱加工丸太の調達や、鉄杭の焼入れを急ピッチで行い、9月12日にヘリコプターで現地へ荷揚げを済ませた。しかし、他の作業
や悪天候などで遅れてしまい、実際手が付いたのは10月に入ってしまった。しかも土日などはまだまだ通行する登山者が多く危険なため、作業は出来ない。そうこうしているうちに今年は台風が頻繁に訪れた。台風が来ると通行人はいないのだが、もっと危険な状態になる。ここ吊尾根分岐は北岳周辺では最も強い風の通り道なのだ。風速50m前後の風の為に金属製の工具や丸太が飛ばされたりする。当然拾いに行くはめになる。涙目になりながら、ここに自生しているキタダケソウ他の花たちに敬意を表したくなる。
 
今回は路肩保全と流失防止柵に重点を置いた施設整備となった。30数年前から密かに愛でている最上部のキタダケソウも当分の間、流出から免れ、さらなる自生地の拡大を目指していくことだろう。
 
国立公園利用で最も大事なことは自然保護と適正利用である。希少種を知ることから広がる自然保護の定義は当クラブのモットーだが、入山者を楽しませる側も現状に甘んじることなくさらに継続した管理が必要だろう。エコパーク構想や自然遺産への道も地域の人がいかにそれに取り組んでいるかが大きな鍵になると言われている。まだまだしなければならないことは山積しているはずである。
(塩沢久仙・記) 
 

平成25 年度高山植物観察山行を実施

平成25年度は、6月15日〜16日に実施しました三つ峠山山頂周辺における観察山行(JAFPA 情報紙№72号に実施報告を掲載)に続き、7月28日〜29日には、17名の皆さんが参加され、本年度2回目の観察山行が栂池自然園、八方尾根周辺において実施されました。

以下は、栂池自然園、八方尾根周辺における観察山行に参加された皆様からの報告です。

白馬八方尾根・栂池自然園山行

山梨県甲府市 早川 源

武田久吉著「原色日本高山植物図鑑」「続原色日本高山植物図鑑」が日焼けしたまま書棚に並んでいる。結婚記念に友人から贈られたものである。初版は昭和34年・37年、再版は46年とあるから、かれこれ40年ほど前になる。この2冊の存在はいつも気にはなっていたのだが山行に機会はあまりなく、10年ほど前にこの会主催の北海道アポイ山行、6年ほど前の尾瀬行、3年ほど前の三つ峠ぐらいで、近くの山へのハイキング程度であった、ところが昨年、イタリア北部のスイス・フランスに接するモンテローザやモンテビヤンコ(モンブラン)を望むトレッキングを楽しむ機会に恵まれた。また青い芥子の花を観てきたという友人の話に刺激されて山への思いが募ってきた。

さて、「白馬八方尾根・栂池自然園山行」は曇りのち雨であった。初日は蛇紋岩に足を滑らせながら遠くに放牧の牛の群れを眺め、雪渓の音を聞きながらの4時間程度の山行であった。頂上の池の周りは先生に付き添われた子供たちやツーリズムのお客様などでにぎわっていた。我々のパーティーは井川さんをリーダーに、宮田さん、三つ峠山荘の中村さん等のガイドで花の名前を一つひとつ確認しながら「シモツケソウ・キンコウカ・イワカガミ・カラマツソウ・ハッポウウスユキソウ・・・」などの名前を反芻しながらゆっくり歩を進めた。

2日目の栂池自然園は、群生するコバイケイソウやニッコウキスゲを縫うように張り巡らせた木道を行く。足元には、モウセンゴケ、マイヅルソウ、サンカヨウ、シナノキンバイ、イブキトラノオ、キヌガサソウ、チングルマの咲き終わったものなどが次々と現れる。厚い雪の下で1年に数ミリしか成長しないものもある。

葉に隠れ 雨にかくれし マイヅルソウ
ユリの蕊 白馬雨粒 撥ねかえす
栂池や ホトトギス咲く 雨のなか
一輪の シラネアオイに 声あがる
黄泉の国 キスゲ満開 一日花

雨の山行はとかく鬱陶しいものである。歩数計を見ると14000歩。しかし、幸い小雨であったからか、それとも久しぶりの山行だったからか、仲間に恵まれゆっくり花を観察することが出来たからだろうか、すっぽりと靄に包まれた白馬・栂池自然園は黄泉の国をさまよっているような至福の時間を用意してくれた。なにものにも代え難いこの感激、この歓びの輪を広げながら次の世代に繋げていきたいものである。


高山植物一口メモ フクジュソウ(きんぽうげ科)

コアツモリソウ(らん科)

北海道から本州・四国に分布する日本固有種で、2月〜3月頃、新葉と共に、茎頂に、黄金色の美しい花を一個つけ、花の直径は3cm、春一番に咲く花は、温度を感じて、10度以上で開き始め、15度〜20度で完全に開く。花後は茎の高さは15cm〜25cmにもなる。
新年を祝う花として珍重され、促成栽培して、正月の床の間等に飾られる。現在園芸品種として、42種が保存され、赤花系には、秩父紅、緋の海、紅撫子、自花系には、銀世界、白牡丹、弁天、緑花系には、王孔雀、段咲には、三段咲、黄色系には、金采、金世界、瓜折笠、撫子、福寿海等があるが、特に福寿海は、促成栽培に適しているうえに、花弁は丸く、葉は濃緑色で、芽は太く芽立ちも良く、草姿が整い強健なので、人気が高い。(文と写真 大内京子)


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