JAFPA NEWS(会報)

JAFPA NEWS Vol.75

高山植物フォトコンテスト最優秀賞 「ベンケイソウ」
高山植物フォトコンテスト最優秀賞 「ベンケイソウ」 鵜戸賢一(兵庫県伊丹市)

私と涸沢と先生と

理事 山口 孝

私が初めて穂高涸沢に足を踏み入れたのは、昭和36 年で中学1 年生の夏休みでした。それ以来、高校、大学の休みの度に涸沢通いをしてすっかり山の魅力にとりつかれました。

私が大学生の頃、涸沢のキャンプ場や山小屋には多くの山を愛する若者が出入りしており、夕暮時には皆で山の歌を口ずさんでいました。「いつかある日」、「山の大尉」など…。

当時の山の花形アルバイトは、営林署(現森林管理署)が募集するグリーンパトロールで、山好きな女子大生がこぞって涸沢に来ており、我々小屋番とのラブロマンスもいっぱい芽生えました。その当時の女子大生の靴はほとんどが青いキャラバンシューズであったことは今でも目に焼きついております。

白?先生との出会いは1972 年の6 月頃でした。当時フランスのシャモニーには先鋭的日本人登山チームがおり、冬季グランドジュラスのウォカー稜を初登頂し、その記録フィルムを私が預かり先生に届けたのが最初にお目にかかった次第です。確か、その頃先生は「ヨーロッパアルプス」の立派な写真集を出版されていたと思います。

その後はヒュッテの親分こと、小林銀一さんと白簱先生の深い深いお付き合いの中で私も少しずつお手合わせをさせて頂きました。先生の山に対するスーパーバイタリティーと洞察力、気合いには昔からずっと感心し、感動しております。先生の山に対する信念は全くぶれずに活動されており、大変頭の下がる思いです。とにかく義理、人情に厚く、人に対する心遣いがすごいなと思います。先生がヒュッテに滞在しているとき、多くのファンの方にサインを頼まれていますが、必ず山に対する思いを一言添えて書いて下さいます。何通りの“山の思い”をお持ちなのか、臨機応変に対応して下さっています。

そのような訳で先生と親分の長いお付き合いの少しお裾分けを私が頂いてまいりました。この協会の仲間に入れて頂いたのも先生のお陰と感謝しております。

さて、最近ここ上高地周辺でも日本ジカの目撃があり、南アルプスの二の舞になるのではととても心配しております。早く手を打たないと、涸沢周辺のニリンソウも全滅するのではと危惧しています。

涸沢でも3 年ほど前より猿の軍団がザイテングラード直下のお花畑を荒す姿を私も見ました。何たる事と愕然となりました。集団で大雪渓をギャアギャア言いながら横断しています。槍・穂高の高山植物もシカ・サルに荒らされるのも時間の問題と判断されます。地球規模の温暖化の中で近年(おおよそ10 年くらい)は、とてつもなく気象変動が早くなっていると感じます。

しとしとと降る日本特有の梅雨はどこへ行ってしまったのか。まるで南国のスコールのような雨はどうして?最近の異常なまでの暑い照り返しは一体何なの?今冬3 月のドカ雪は何?ちょっとおかしいぞと感じるのは私だけではないと思います。日本の情緒あふれる素晴らしい四季と自然は絶対に残さなければなりません。

今後も山に仕える私ども小屋番は登山道整備や登山者への山の啓蒙活動を通して、山を守ってゆく所存です。


南アルプスユネスコエコパーク(生物圏保存地域)登録!
自然と共生する地域の取り組みと今後について

南アルプス市 ユネスコエコパーク推進室 広瀬 和弘

第26回MAB計画国際調整理事会が本年6月10日からスウェーデンヨンショーピングで開催された。その審議のなかで各国から申請されている生物圏保存地域の審査が行われた。今回日本から推薦を受け審査されたのは、南アルプス(山梨、長野、静岡県)、只見(福島県)と拡張申請をする志賀高原(長野県)の3件である。世界遺産と同様に事前に国際諮問委員会からの勧告があり、それに基づき国際会議で最終的な審議が下される。またユネスコエコパークの場合現地審査はなく、すべてを申請書の内容で審査を受けることになる。ユネスコには申請書(英文)、動植物リスト、学術的文献リスト、管理計画リスト(法的保護担保)、ゾーニング図、署名等の資料を提出しなければならない。また国内では政府独自の審査基準が設けてあり、それに沿って日本ユネスコ国内委員会自然科学小委員会MAB計画分科会の審査によって国内推薦が決定する。窓口は文部科学省。関係する省庁は環境省、農林水産省、林野庁等である。

生物圏保存地域とはユネスコ(国連教育科学文化機関)が1976 年から開始したプログラムでMAB計画(人間と生物圏)の実践地域を登録していくものである。世界自然遺産が自然環境の保護・保全を主眼としていることに対してユネスコエコパークは自然の保全と利活用の調和を目的としている。つまり地域で「人と自然のいい関係」を維持するためにどのような取組みを行うかが世界的なモデル地域として認められるわけである。またユネスコエコパークには3つの機能と3つの区域設定が求められる。それは保全機能、学術的研究支援、経済と社会の発展であり、3つの区域は核心地域、緩衝地域、移行地域である。特に3つの区域設定はユネスコエコパークの重要な要素である。核心地域は「多くの動植物の生育が可能で、法的にも厳しく保護され、長期的に保全されていること」、また緩衝地域は「核心地域の周囲または隣接する地域で、核心地域を担保する機能を持ち、教育や研修、エコツーリズムなど自然の保全・持続可能な利活用への理解の増進、将来の担い手の育成等が行われること」、さらに一番外側にあたる移行地域は「人々が居住し生活を営んでおり、自然環境の保全と調和した持続可能な地域社会の発展のためのモデル地域であること」である。

ユネスコエコパークは今回の審議によって新規に13地域を承認し、これで119カ国631地域となった。国内では7地域となったのである。

ユネスコエコパークは国内呼称であり、国際的にはBiosphereReservesと呼ばれるもので「生物圏保存地域」と呼んでいる。国の窓口である文部科学省日本ユネスコ国内委員会ではこの生物圏保存地域をもっと国内に浸透させて取組みを活発にするため、誰もが親しみを持てるように「ユネスコエコパーク」と名づけた。国内ではこれまでに1980 年(昭和55年)に志賀高原(長野県、群馬県)、白山(石川県、岐阜県、富山県、福井県)、大台ヶ原・大峯山(奈良県、三重県)、屋久島(鹿児島県)が登録されていたが、地域での具体的な取組みはほとんどされていない状態であった。ところが、2012年国内最大級の照葉樹林を持つ宮崎県綾地域がユネスコエコパークに登録されたことで国内におけるユネスコエコパークの知名度は急速に高まった。また、既存の4地域には移行地域が設定されておらず、今回志賀高原のように移行地域を設定した拡張申請がなされたことから、今後ユネスコでは移行地域の設定がない登録地は抹消するという指針を出していると聞いており、残る3地域の動向が注視される。このユネスコエコパークも年々審査が厳しくなっているのが現状である。

南アルプス世界自然遺産登録推進協議会では2009 年(平成21年)、ユネスコエコパーク推進部会を設置して登録に向けた活動を始めた。推進部会長には南アルプス市長、また事務局は南アルプス市が担当した。その推進部会のなかに学識経験者からなるエコパーク登録検討委員会を設置し申請に向けた作業を行った。委員長には長年南アルプスの高山環境を調査研究されてきた静岡大学特任教授の増澤武弘氏が就任した。増澤先生とは南アルプスの現場でも調査のお手伝いをさせて頂いたりと公私ともどもお世話になっている。

この検討会では、ゾーニングの調整や決定、さらに申請書の作成等、MAB計画委員会委員の助言を得ながら作業を進めたのである。この検討会で南アルプスユネスコエコパークの理念を、「高い山、深い谷が育む生物と文化の多様性」とした。また10市町村長による基本合意締結も行い、南アルプス地域の生活や文化、民俗芸能、そして南アルプスの自然環境を共有の財産としてこれまで南アルプスの山々の恩恵を受けながらも山によって交流が阻まれていた市町村が「南アルプスの自然環境保全」、「地域間交流」、「永続的な管理運営」等、南アルプスを取り巻く地域社会の課題解決のために共に歩むことにしたのである。

南アルプスがユネスコエコパークに登録されたことは南アルプス国立公園を有している関係10市町村が南アルプス世界自然遺産登録推進協議会を設立して、南アルプスの自然環境をどのように保全していくか活動を進めてきた唯一無二の成果といえる。南アルプスユネスコエコパークの構成市町村数は10(山梨県:韮崎市、南アルプス市、北杜市、早川町、長野県:飯田市、伊那市、富士見町、大鹿村、静岡県:静岡市、川根本町)であり、総面積は302,474ha と国内では最大を誇る。また、10の自治体が横断的につながっていることも国内では例がなく今後の取組みが注目されている。

南アルプスの高山帯では、ニホンジカによる食害、ライチョウの生息数の減少など、私たち人間の活動によってもたらされたさまざまな現象が引き起こされ、これまで当たり前にあった自然が急激に失われつつある。こうした問題に私たちは英知を持って未来に向かい取り組んでいかなければならない。

世界遺産が「覚悟」が必要ならば、ユネスコエコパークは「体力」が必要である。この登録が将来にわたって長続きする活動を地域間で共有し、地域力を高める南アルプスの大きな財産であって欲しい。あたかも本年は南アルプス国立公園が指定されて50年を迎える節目でもある。この記念すべき年にユネスコエコパークに登録できたことは南アルプスの自然環境保全について地域の方々が国際社会の一員として「自信と誇り」を持ち取り組むまたとない機会が訪れた。南アルプスが国際的に認知されたのである。

今後南アルプスを取り巻く関係10市町村では、行政区域にとらわれないさまざまな横断的な取組みが生まれることを期待したい。


協賛事業

南アルプス国立公園指定50 周年記念事業実行委員会が主催する「南アルプス国立公園指定50周年記念事業クロージングイベント」が、10月4日(土)~5日(日)に開催されることとなりました。

当会では、この事業を協賛事業とすることとし、会員の皆様に参加を呼びかけることとなりました。なお、この事業に関するお問い合わせは、下記にお願いします。

主催 南アルプス国立公園指定50 周年記念事業実行委員会
お問い合わせ 南アルプス市ユネスコエコパーク推進室
Tel:055-282-7261  Fax:055-282-6279
ホームページ http://www.env.go.jp/park/minamialps/

石原環境大臣が南アルプスを視察

「ニホンジカ対策 何とかしなければならない思い強くした。」

7月22日~23日、南アルプスがユネスコエコパークに認定されたことを受け高山帯でのニホンジカの食害対策など保全状況を確認するため、石原伸晃環境大臣が仙丈ヶ岳を視察されました。

石原大臣は22日に北沢峠こもれび山荘に1泊、23日午前5時に北沢峠を出発し仙丈ヶ岳に向かい、南アルプスにおけるニホンジカによる食害の現状について職員や山小屋関係者らの説明を受けながら、高山での試行捕獲が行われている小仙丈カールや馬の背周辺で高山植物を保護する防鹿柵などを視察されたとのことです。

下山後の石原大臣のコメントによると、「標高によって植生が異なる素晴らしい場所。レンジャーの数にも限りがあり、足りないところを多くの人が補い、生態系を守っていただいている。」と地域の取組に感謝されていました。また、直接ニホンジカによる高山植物の食害の現状をご覧になり、「予想以上に高いところにまでニホンジカが来ており、被害を何とかしなければならない思いを強くした」と今後も高山植物保護のためのニホンジカ対策に力を入れていただけるものと期待しております。

その他、近年生息数が減少しているとされるライチョウの保護事業について南アルプスでも検討を進めていることや、リニア中央新幹線については環境に十分配慮した事業推進に期待しているとのコメントもありました。

石原環境大臣の南アルプス視察は、私たち地元は大歓迎でした。貴重な南アルプスの自然を傷つけることなく、後世に伝えていくために、心新たに活発な活動を展開して行きましょう。(塩沢記)


平成25年度フォトコンテスト 高山植物入賞作品14点

最優秀賞作品「ベンケイソウ」鵜戸賢一(兵庫県伊丹市)は、ページトップに掲載させていただきました。

ワタスゲ
優秀賞 「ワタスゲ」
深井 幾蔵(埼玉県蕨市)
エゾコザクラ
優秀賞 「エゾコザクラ」
大内 京子(千葉県我孫子市)
タチツボスミレ
入選 「タチツボスミレ」
小林 和子(東京都昭島市)
ヤマイワカガミ
入選 「ヤマイワカガミ」
鈴木 文夫(静岡県富士市)
ホテイラン
入選 「ホテイラン」
鈴木 文夫(静岡県富士市)
キクザキイチゲ
入選 「キクザキイチゲ」
高橋 英子(東京都大田区)
セツブンソウ
入選 「セツブンソウ」
鵜戸 賢一(兵庫県伊丹市)
コマクサ
入選 「コマクサ」
大平 昭善(東京都府中市)
クモイコザクラ
入選 「クモイコザクラ」
鈴木 文夫(静岡県富士市)
オカトラノオ
入選 「オカトラノオ」
高橋 英子(東京都大田区)
チングルマ
入選 「チングルマ」
所 彰(埼玉県朝霞市)
ノハナショウブ
入選 「ノハナショウブ」
三神 徹(静岡県三島市)
チングルマ・ホソバイワベンケイ
入選 「チングルマ・ホソバイワベンケイ」
村上 浩二(青森県青森市)
 

高山植物一口メモ シナノキンバイ[信濃金梅](きんぽうげ科)

シナノキンバイ[信濃金梅](きんぽうげ科)

本州中部以北の高山地帯に生える多年草で草丈は、30cm から60cm 位。葉は掌状五深裂し、その裂片も三深裂する。花は鮮黄色で、径4cmほどのがく片が、通常は、5~7 枚。花弁状で美しい。花弁は小さく、おしべの集団の外側に接している。花期は、7月から8月。
小学校6年生の夏休み、毎日学校へ通って雨の日は、しちりんに炭をおこして、新聞紙を乾かし、先生が夏休みを利用して信州の蓼科高原で採集した高山植物の標本作りのお手伝いをしました。その中のシナノキンバイの美しさが忘れられず、私も大人になったら、必ず、彼の地を訪れたいと願いました。憧れの地を訪れても眼前に広がる花の美しさに酔いしれるばかりで、その時は、美しい花とだけ思っていました。(文と写真 大内京子)


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