JAFPA NEWS(会報)

JAFPA NEWS Vol.76

朝日と富士山(写真提供:大石佳織氏)
朝日と富士山(写真提供:大石佳織氏)

高山植物保護を志ざし、ここに26 年を経過、この年月の実情はどうであろうか?

会長 白簱 史郎

平成元年、当時の知事であった望月幸明氏との食事会に於いて、初めて高山植物の踏み荒らしと乱獲に話が及び、このままでは、この貴重な日本の高山植物は遠からず絶滅の憂き目を見るだろうとの結論が出た。その時、望月知事は即時、県条例制定担当課長をその席に呼び、緊急に「高山植物保護条例」を起草・制定することを命じられ、同時に「日本高山植物保護協会」の設立を決められた。これは日本が世界に先き駆けての自然愛護精神の宣言であった。

これを契機として日本各地に多くの保護団体が作られ、活撥な活動が開始された。このまま行けば、文字通り順風満帆、大成果が期待された。しかるに熱し易く冷めやすい日本人の性格は年毎にその熱を失って運動は下火に向かった。あまつさえ、保護を大声にうたいながら、その美名にかくれて、貴重な高山植物・稀品種植物を不当に採集する不心得者があとを絶たない。そして、いつしか保護を忘れて、以前の如く興味すら抱かない人たちが増えてきているのが実情である。

それに加えて動物保護の本道を間違え、シカを保護する、という美名のもとに、間違った餌の与え方から各地・各山岳に野生シカが猛繁殖して至るところの花園は花も茎も食いつくされて、昔日のおもかげは全くない、という現状である。

私たちは高山植物保護条例制定以来、全員力の限り、高山植物保護のために尽くしてきた。人は何ごとにも、時を経ると急速に、物事に熱を失う傾向があるが、それではあまりにも情ないではないか。

私はあの美しく万花咲き乱れるかっての高山お花畑をつねに夢に見る。そこに立ちつくし、花アブの羽音に耳すましながら、夢見心地で過ごした、あの若き日のことどもを・・・・

私はいつも思う。あのすばらしい大自然の美しく広大であったお花畑を・・・。そして、再び、そうした美しい景観が展開する日のことを考え、夢見ている。

JAFPA 会員の皆さん、どうかもう一度心と力を併せて、この美しく貴重な日本の山地を飾る、各地のお花畑を私たちの手で取り戻そうではありませんか。この壮大な私たちの夢を・・・・・


南アルプス アクティブ・レンジャーの活動

環境省南アルプス自然保護官事務所 自然保護官補佐 大石 佳織

「アクティブ・レンジャー」この単語を聞いたことのある方はどれくらいいるだろうか。響きはとてもかっこよく、一度聞いたらなかなか忘れられそうにないが、知っている方はあまり多くないかもしれない。ここからは、南アルプス国立公園の「アクティブ・レンジャー」の活動を少し紹介したい。

アクティブ・レンジャー

まず、「アクティブ・レンジャー」とはなんなのだろうか。

国立公園には自然保護官(別名レンジャー)が配置され、自然環境保全のために日々業務にあたっている。そして自然保護官を補佐するために配置されているのが、自然保護官補佐(別名アクティブ・レンジャー)だ。南アルプス国立公園の事務所には、現在、専任のレンジャーとアクティブ・レンジャーの計2名が常駐している。私はそんな事務所のアクティブ・レンジャーで、平成26年8月から活動している。

活動内容

アクティブ・レンジャーの業務は、レンジャーの事務作業の補佐をはじめ、国立公園の普及啓発活動や、登山者カウンターを用いた登山者数の調査、国立公園に関する情報を発信するブログ「アクティブ・レンジャー日記」の更新など多様である。

このほか、シカの移動経路調査のために設置しているセンサーカメラのメンテナンスへの同行や、防鹿柵の設置作業への参加など、南アルプスではシカ対策に関することで山に入ることがとても多い。

9月には、南アルプス高山植物保護ボランティアネットワークが中心となって行っている塩見岳での植生復元作業に参加した。シカの採食によって裸地化した斜面にマットを敷設して、土壌流出等を防ぎ、植生の復元を促すというものだ。

現在、塩見岳東峰直下付近は、こぶし大の岩がガラガラと一面に広がっている。これまでの登山で、こんな雰囲気の場所をたびたび見てきたので、塩見岳の斜面を見たときもよくある景色のひとつと認識し、何も感じなかった。ところが、ほかの参加者から、この場所がかって一面お花畑だったと聞かされたのだ。シカの採食によって数年のうちにお花畑から裸地へと変化したという。とても驚いた。登山歴の浅い私は、かっての山の様子はなにひとつ知らない。「現在」しか知らないため、異変が起こっていることに気づくことさえできないのだ。「過去」の南アルプスの様子を記録していた人、それを伝えてくれる人がいて初めて、「現在」の私たちは変化を知ることができるのだということを、このとき強く感じた。

これから

最近は登山を始める人が増えているが、私同様、山で起こっている変化に気づくことができずにいる人も多いのではないだろうか。このような人たちに「知ってよかった」と感じてもらえるような情報を発信していくことが、これからの大切なしごとのひとつだと考えている。南アルプスについて、まだまだ知らないことは多い。活動の中で、教えられ気づかされた変化や現在の様子を、将来のためにも伝えていきたい。


【活動報告】「ビロードモウズイカ」除去作業

南アルプス市役所みどり自然課 杉山啓子

芦安ファンクラブの清水准一さんから、ビロードモウズイカの除去作業をしたいので市でも支援をしてほしいと話があったのは、南アルプスがユネスコエコパークに登録されて間もなくのことだった。初めて聞く名前に何度か聞き直しながら、それが帰化植物であることや、御勅使みだい川河川や隣接する道路沿いに急速に繁茂し始めていることがわかった。

早速教えられた場所に行ってみると、背丈が高く太い真っ直ぐな茎先に、長い穂状の花序を出して多数の黄色い小花を付けている植物がそこかしこに林立し、「いったい、いつから、こんなに」と初めてみる光景に、芦安へ向かう道を何度も車を走らせていながら気付かなかったのかと、愕然とした。

清水さんによると、数年前から南アルプス林道沿いでビロードモウズイカの繁殖がポツポツと確認されており、気づいたときに、車を止めて抜根していたという。数年前からは、芦安入り口の日入倉橋びりくらばし付近で、このビロードモウズイカが確認されていて、橋を渡りきったところから、上流部に向かって約500mの範囲で、道路沿いや河川敷に異常な速さで繁殖が拡がっている。

ビロードモウズイカは、環境省が指定する特定外来生物ではないが、南アルプスユネスコエコパークの核心地域の希少種を保護保全するために、侵入を防止する措置が必要である。

このため、植物の結実前に南アルプス登山の入り口である芦安地区の水際で外来植物の侵入を防ぐため、芦安ファンクラブはもちろん、芦安かたくりの会など芦安地区の住民有志を中心に除去作業をしたいので、焼却処分場への搬入など支援をしてほしいというものだった。

7月27日(日)、市役所職員や新聞紙上でも呼びかけ、環境省南アルプス自然保護官事務所の中村保護官や近くに作業場を持つ事業者の参加もあり、除去作業ボランティアは、総勢50 余名に膨らみ、作業が行われた。

地表面から刈り取ったり、抜き取ったりしたビロードモウズイカは、種子をこぼさないように丈を短くして丁寧にビニール袋に入れ、口を結んで集めていった。1トントラック5台程度の収穫物を前に、この日の作業を終えた。

南アルプスユネスコエコパークは、南アルプスの豊かな生態系や生物多様性を保全し、自然に学ぶと共に、文化的にも経済・社会的にも持続可能な発展を目指す取り組みが世界的モデルとして認められたものである。帰化植物の除去作業は、ユネスコエコパークとして、南アルプスの自然を保全するために、人や地域が関わってすすめるその第一歩である。


平成26年度高山植物フォトコンテスト作品募集

  • 応募作品の裏面に、花の名前、撮影場所と年月日、氏名、連絡先、会員番号を記載してください。
  • 入賞者には盾と賞金を授与するとともに、情報紙とホームページで紹介します。
  • 応募作品は返却できませんので、ご了承ください。
作品の大きさ 四つ切
募集締め切り 平成27年3月末日
表彰式 通常総会の当日
審査員 白簱史朗氏(NPO法人 日本高山植物保護協会会長)

平成26年度観察山行で出会った花(写真提供 宮田義之氏)

イブキボウフウとカワラナデシコ
イブキボウフウとカワラナデシコ
キンバイソウ
キンバイソウ
イブキジャコウソウ
イブキジャコウソウ
ルリトラノオ
ルリトラノオ
シモツケソウ
シモツケソウ
ヤマホタルブクロ
ヤマホタルブクロ
クサフジ
クサフジ
ハクサンフウロ
ハクサンフウロ
メタカラコウ
メタカラコウ
イブキフウロ
イブキフウロ

高山植物一口メモ ササユリ(ゆり科)

ササユリ(ゆり科)

ゆり科の多年生草本で、日本固有種、自生地は、本州中部以西の低山地。草丈は50cm~100cm 位、葉は互生で、笹状、花期は、6月上旬から7月上旬で、花色は淡紅色で、古くから詩や歌に詠まれ、また伝説や文学にもとり入れられて、日本でユリといえば、これをさすほど代表的なユリです。
ササユリがよく育つと、茎の先に3本の小花梗が分かれて3個の花が咲きます。ササユリの古名 三枝(さきぐさ)は、奈良市の率川(いさかわ)神社で、六月十七日に行われる三枝祭(さえくさのまつり)に、酒樽をササユリで飾ることからのようです。古代のユリ祭のために集めるユリは200本、昔は三輪山中に咲くユリを巫女によって集めていたのですが、今は花が少なくなったので、遠くか ら氏子によって集められているそうです。
山中や草原に咲くササユリほど典雅な花はないと思います。(御多分に洩れず、この花も柵の中)(文と写真 大内京子)


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