JAFPA NEWS(会報)

JAFPA NEWS Vol.77

ストックの先にゴムキャップを着ける運動を始めた南アルプス市ストックの先にゴムキャップを着ける運動を始めた南アルプス市
ストックの先にゴムキャップを着ける運動を始めた南アルプス市

JAFPA 活性化のために

理事 岩科 司

日本高山植物保護協会は、わが国の亜高山帯~高山帯を中心に広く野生植物の保全について積極的に活動を行ってきた団体である。

現在日本には、約7500 種の陸上植物が自生しているが、そのうちの約1500 種の被子植物、約20 の裸子植物、約110 のシダ植物そして約140 のコケ植物が日本固有、すな わち地球上で日本にしか生育していない植物である。しかも日本の野生植物のうち、すでに4 種に1 種が今後絶滅が心配されている植物である。そのため、日本列島は世界の 34 の地域が指定されている「生物多様性ホットスポット」のうちのひとつである。この指定基準は、1500 種以上の維管束植物の固有植物が存在する事、そしてもうひとつが" 自然環境の70%が破壊されている" ことである。これは何を意味するかといえば、多様な植物が生育しているが、それがかなり破壊されている、ことを意味する。その破壊さ れた地域のひとつが高山帯や亜高山帯を含めた山地帯である。この保全に対して私たちの協会は各種の催しや幅広い活動を行ってきた。

しかし、近年、協会員の高年齢化が進み、このままでは実践的な活動に影響が出ると危惧される。それを補うためには、如何に若者たちをこのような活動に参加してもら えるようにできるかどうかと、同じような活動を行っている他の団体との横断的な連携を強化できるか、にかかっていると考える。私は学生に対しては学生会費を設けてもい いと思っているし、山岳関係者だけでなく、広く青少年への高山植物保護の啓発を積極的に進めていってもいいと思う。

また同系の団体との連携については、私ごとながら、昨年より全国の植物園が加盟している日本植物園協会の会長を拝命した。高山植物も含めた野生生物の保全に互いに 協力できる全国的な体制が何とかできないかと思っている。


八ケ岳の鹿の被害対策への取り組みについて

長野県茅野市 浦野 岳孝((有)硫黄岳山荘 代表取締役社長)

「あそこにいる動物はなあに?」と同行している女性の指さす先を見ると1 頭の雌鹿であった。驚い たのは、その場所が硫黄岳の爆裂火口跡の絶壁の中であり、こともなげに普通に走っている、その姿だっ た。昨年7 月上旬のことである。

八ケ岳の岩稜帯でも見かけるようになっていたが「こんなところまで!」という強い衝撃をうけた。

 これまでの状況

私の経営する硫黄岳山荘( 標高2,650m)は八ケ岳でも随一の高山植物の群生地「横岳(標高2,829m)」に隣接している。戦後、乱獲され続けたコマクサ群を祖父の代よ り父も、執念のように保護し復活させてきた。また、本州では白馬岳と八ケ岳の横岳にしか生息しないたいへん貴重なウルップソウやツクモグサも同様であった。

高山帯の稜線の植生に異様さを感じ始めたのは7~8年前くらいだろうか。

特に6年ほど前には、山荘の稜線側にあったシナノキンバイ群落とミヤマハンショウズルが芽を出さなくなった(実は、出てきたところを食べられていた)。

まさかと、甘く見ていたことを痛烈に反省させられる事実。鹿の仕業であった。

 鹿による被害

鹿が高山帯において生息することで、厄介なことがおもに3つある。

1つは、踏み荒らし。いたるところを歩いて植生を破壊することだ。砂礫地の斜面はコマクサの群生地。多年草で、たくさんの大きな株が芽吹いて多くの花を付ける。

この芽吹くときに縦横無尽に砂礫地を歩かれる。斜面全体にちいさな穴が無数にでき、小さなクレーターだらけになる。大きくなるはずの株が大きくなれない。新しい芽 が、踏みつぶされて成長できない。

2つは、土砂流出。デリケートな砂礫地に鹿道を作って土砂の流出を誘因してしまう。斜面崩壊につながる(食害で植生の失われることによる山腹崩壊も同様)。

3つは、植生壊滅。高山植物を食べることによってなくなってしまうこと。およそ1万年前の氷河期からの由来と言われている貴重な高山植物が、たったこの数年で壊滅、 全くなくなってしまう実態だ。

おまけに、硫黄岳のバイケイソウ数百株、夏沢峠の下方のトリカブト群落など、人間なら死んでしまうのに彼らは食べている。無事かどうかはわからないが。

この植生は全滅している。

 対策、対策後

鹿の被害対策は、「南北八ケ岳保護管理運営協議会(注)」を窓口にした「林野庁からの助成」を得ることができたことよって、実質的に始まった。

これは、おもに鹿よけネットの資材の提供であり設置実績は下記の通りである。

・2009 年麦草峠730m ・2010 年黒百合平400m、横岳( 台座の頭)400m 

・2011 年しらびそ小屋付近(凹地)280m

さらに2014 年時点では、硫黄岳山荘として、この横岳の「台座の頭」の対象域を2箇所に広げ、山荘南側、山荘西側も増やし合計4箇所、のべ950m の高山植物保護のため のネットを張っている。うち3箇所は、バッテリーによる感電式のものである。

我々の手で毎年雪融けの5月末ころ設置、降雪前の10月中旬に撤去している。

ネットで保護したところは明らかに植生が戻り、コマクサの新芽がたくさん出てきている。こんなに出るものかと感心するほどだ。花のつく数年後が待ちどうしい。

次のステップとして、2011年2月に私は罠の免許を取得。高山帯に罠を設置することや、捕獲した鹿の処理の方法などの課題を、行政の方々の協力を得てクリアし、この年 の秋から実際に捕獲を始めた。

2011 年2頭、2012 年8頭、2013 年9頭、2014 年6頭、計25頭の実績だ。

ネット保護だけでは、その場所はいいが、そこだけ。山全体にネットを張れない。(下界では、畑や森林資源を守るため、山に向かって山を取り囲むようにネットを張っ ているが・・・。鹿の囲い込みのようだ。)

「攻める」ということではないが、頭数を減らさないとどうにもならないと考えて始めた。捕獲し処理しているので確実に減っているのは事実である。しかし、根本的な 解決には至っていない。歯がゆい気持ちだ。すくなくとも、頭数の増えることや被害の拡大に「歯止めがかかっているのではないか」と気休めに思うのが、せめてもの今の心 の安寧かもしれない。

 これからの展望

長野県内で106,000 頭の生息数を推定( 県) している。2015 年度の年間捕獲目標35,000 頭をさらに、40,000 頭に引き上げて取り組むらしい。お骨折りいただいて いる行政や猟友会の方々に深く頭が下がる思いである。たいへん感謝している。これからどのくらいの間、どれだけの対処ができていけるのだろうか。

八ケ岳の稜線で自分みずからが動くことによって、少しでも改善が果たされるであろうか。ささやかでも効果を期待している。

鹿よけネット。こんな見苦しいものは、いつまでも稜線に置きたくない。だが、鹿が上ってこなくなるまで続けなくてはならいと思う。冬支度でネットを撤去する際に、 北アルプスに沈む夕日を見ながら「そんな日は、来るのだろうか」、しみじみと思ってしまう。以上

(注)周辺の行政機関、森林管理署、山小屋などの関係者で組織


平成27年度 高山植物観察山行

今年度の観察山行は乗鞍岳を計画しました。乗鞍岳は北アルプス南部の長野県松本市と岐阜県高山市にまたがる剣が峰(標高3026m)を主峰とする山々の総称です。高山植 物園の散策と剣ヶ峰までの登山を行ないます。畳平から頂上までの途中には、キバナシャクナゲ、アオノツガザクラ、コマクサ、ハクサンイチゲ、ミヤマキンバイなどのたく さんの花々に出会えると思います。多数の会員皆様のご参加をお待ちしております。

日時 2015年(平成27年)7月26日(日)~7月27日(月)
集合場所 乗鞍高原観光センター(バス発着場 駐車場あり第一280 台、第二50 台)
集合時間 乗鞍高原観光センター 7 月26日(日) 午前11時00分
畳平で合流される参加者 12時00分
甲府駅からの参加者 甲府駅南口 午前8時00分
観察場所 乗鞍岳周辺
参加費 当協会会員 13,500 円(畳平で合流される参加者は11,000円)
(宿泊費、翌日の昼食代、バス代、保険料、写真代、その他)
なお、甲府駅からバスを用意します。
日程
26 日 畳平高山植物園 一周約60 分 (銀嶺荘宿泊)
27 日 畳平~ 0:30 肩の小屋~ 1:00 剣ヶ峰往復 
          普通の歩行時間集合場所にて解散 15:00 頃 
(観察含め約5時間)甲府駅からのバス利用者は甲府駅着 18:00 頃 なお、 天候などの状況によりコースの変更もあります
募集定員 25人
申込締切 平成27年6月12日(金)期日前でも定員になりましたら締めきります。
参加の可否については、6 月25 日(木)までに連絡します。
申込方法
E-mail、FAX、官製ハガキに下記事項を記載して、申込期限迄にお申込みくだ さい。
(1)住所、氏名、年齢、電話番号(携帯電話番号)、会員番号
(2)登山経験、健康状態、その他特記事項

 定非営利活動法人 日本高山植物保護協会
〒400-0027 山梨県甲府市富士見1丁目3-28
TEL&FAX:055-251-6180  E-mail:info@(アットマーク)jafpa.gr.jp
持ち物・服装 一般的な服装で、雨具、防寒具、非常食、懐中電灯等持参のこと
7月26日の昼食は各自持参してください。

日本各地の高山植物No.12 四国・九州地方

ツクシマツモト(ナデシコ科)6 ~ 8 月
深紅の花弁は山地の草原ではよく目立ちます。マツモトセントウの変種です。
コイワカガミ(イワウメ科)7 月
四国、九州だけでなく全国に分布している。
ヒゴタイ(キク科)8 ~ 10 月
背丈1m 内外になり花は瑠璃色で美しく、朝鮮に多く日本には稀に分布します。
ハナシノブ(ハナシノブ科)6 ~ 8 月
九州の山地草原に分布し、丈は1m にもなります。高山型にミヤマハナシノブがあります。

高山植物一口メモ[キバナノアツモリソウ(らん科)]

キバナノアツモリソウ(らん科)

アツモリソウ属は、北半球の温帯に主として分布し、日本には4種3 亜種がある。いずれも唇弁が大きくふくらみ、その形が武者の羽織る母衣に似ていることから、淡紅色 の美しい花を平家の若武者敦盛にたとえてアツモリソウ、その敦盛を討った源氏の熊谷次郎直実になぞらえて命名されたクマガイソウの花色は地味だが雅味がある。キバナノ アツモリソウは、小型で花の地色が黄色いことから、コアツモリソウは、全草が小さく花も1cm 足らずである。亜種のホテイアツモリソウはその形状が布袋様を連想されるこ とから、そしてレブンアツモリソウは、礼文島の特産であることから、シロバナアツモリソウは、純白の花色から命名された。

キバナノアツモリソウは、本州中部と北海道の亜高山帯の落葉樹林や草原に生える草丈10cm ~ 30cm の多年生草本、花期は5月~ 6月葉の先、横向きに1花をつける。私 がこの花を櫛形山で撮った頃は、キバナノアツモリソウの群落の中に、アツモリソウ、ホテイアツモリソウと咲き競い、季節に此の山に登ればいつでもみられると思っていた 。その後櫛形山から花たちは消えたと聞く、また人間の欲望の犠牲になってしまったのが悲しい。(写真と文 大内京子)


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