JAFPA NEWS(会報)

JAFPA NEWS Vol.86

平成29年度通常総会(都市センターホテルにて)
平成29年度通常総会(都市センターホテルにて)

JAFPA 活性化のために
…広く懸賞論文を募ったらどうでしょうか(2)…

静岡支部 望月 照夫

温暖化は鹿以外の敵も続々高山に送り込みます。動物、植物ともにです。狐やネズミ、もぐら等のほか各種病原菌や寄生虫などです。植物もあなどれません。高山の植生が変わってしまうのです。繁殖力旺盛なイネ科植物が各地の山に増えています。高山植物が駆逐されないとも限りません。

こうした高山植物を取り巻く環境が大きく変化した今日、JAFPAはどういう活動をすべきか、大きな岐路に差し掛かっていますが、しかし、残念ながら会員は保護熱意があり登山意欲もあるものの、以前のように自由に登れなくなりつつあるに加え、会員数も大幅に減少しています。こういう状況下、組織活動も活発に行えなくなっていることは否めません。

そうしたことから、「JAFPA活性化のために」というタイトルでの執筆を求められたのですが、提案することに代えさせていただきたいと思います。

それは、会員を含め広く外部に向かって懸賞論文の募集を呼びかけたらどうでしょうか。部外者たちからの素晴らしい提案が期待されます。部外者のほうが奇抜で斬新で効果的なアイデアを持っている場合も多いのです。

産業界や学術界では異業種間交流はあたりまえです。突き当たった壁や行き詰った考えを打破するエネルギーが異業種から得られます。普段、山や高山植物と縁の薄い人から、魅力的な提案がなされる可能性が大いにあるのです。

懸賞論文ですから入選者には賞金又は景品を提供しますので予算が必要です。もちろん、応募される方々はそれなりに見識高い人と思われますので会加入を勧めたらよろしいでしょう。

世界的企業のコカコーラは、最近「求む、次代の甘味料」のタイトルで1.1億円の懸賞論文を求めました。人材豊富な企業ですら外にアイデアを求める時代です。JAFPAでも行ったらいかがでしょう。ご提案です。

 

世界と日本の高山植物と化学的適応

講師 当会理事 岩科 司 氏

日本や世界の高山植物の化学的適応について話す前に、いま日本に自生している野生植物はどうなっているのだろうか。国際NPO組織「コンサベーション・インターナショナル」によって、世界の34の地域が「生物多様性ホットスポット」に選定された。その中のひとつが日本列島である。指定されるには2つの条件がある。ひとつは1500種以上の維管束植物の固有種が存在すること。そしてもうひとつが自然植生の70%が破壊されているという条件である。そのために豊かな自然がまだ残っているニューギニアなどは選定されていない。すなわち日本は植物が豊かであるが、その環境は破壊されつつあることを示している。私が所属している国立科学博物館ではこれを受けて、それではさらに日本列島の中ではどこで植物が多様であるかを調べたところ、その上位8位のうち、1位と3位は小笠原諸島の父島と母島であったが、残りは2位が屋久島(宮之浦岳)、4位が奄美大島・湯湾岳、5位が夕張岳、6位が南アルプス・北岳、7位がアポイ岳そして8位が八ヶ岳であった。何と上位8地点のうち、6地点が山岳地域であった。島国でありながら、植物の多様化は山間部で生じている事がわかる。それでは日本にはどれくらいの植物が生育しているのだろうか。コケ植物、シダ植物、裸子植物および被子植物をあわせると、日本には7451種の植物が自生している。そしてそのうちの1862種(25%)が固有種、すなわち世界中で日本にしか生育していない植物である。ニューカレドニアの固有率約90%とまでは行かないがかなりの高率である。一方で環境省のレッドデータブックで絶滅危惧植物とされている植物の数も約1770種(24%)である。4種に1種が日本でしか見られない植物だが、ほぼ同じ数だけ絶滅に瀕しているのである。

現在の地球上では、植物は比較的生育に適している熱帯だけでなく、1年を通してほとんど雨の降らない乾燥地帯、極めて限られた期間しか生育できない高山帯、さらには水の中にまで、ありとあらゆる環境に植物は適応し、進出している。動物と異なり、基本的に動く事ができない植物は、形態の変化ばかりでなく、自らが作る化学成分を用いてさまざまな環境に適応している。これらの化合物は二次代謝産物と呼ばれている。ケシやトリカブトなどの毒成分であるアルカロイド、ハーブなどの香り成分であるテルペノイド、アブラナ科やネギ類の辛味成分であるイオウ化合物などである。これらの二次代謝成分は、人類にとっても有用で、私たちが日常で使用している薬品やサプリメントのほとんどは合成品を除けば植物の作る二次代謝成分である。私が研究しているフラボノイドもまた二次代謝成分であり、これまでに1万種類ほどが植物から報告されている。この化合物の特徴は紫外域、特にUV―AおよびB領域に大きな光吸収帯があり、紫外線を吸収することである。緑色植物は光合成を行って自らの栄養を作るので、日光にあたることは重要である。しかしその反面、光にあたるほど生物に有害な紫外線も浴びてしまう。そのために選択的に紫外線を吸収するフラボノイドを合成する能力を身につけたと考えられる。さらにフラボノイドのほとんどすべては抗酸化活性、すなわち活性酸素消去能力をもっている。植物は激しい環境下、例えば、紫外線、pH(アルカリ性や強酸性の土壌)、貧栄養、乾燥など、で生育する場合、ストレスを生じ、活性酸素を放出する。フラボノイドは酸素に対して錆びやすい性質があり、自らを酸化させることで余分な酸素を消去し、生体を酸化から守っている。このような激しい環境のひとつが高山帯である。したがって、高山に生育する植物は大抵多量のフラボノイドを蓄積している。

私はこれまでに日本や世界の高山植物のフラボノイドを研究してきた。日本の植物ではオゼソウ、シラネアオイ、トガクシソウ、キタダケソウなどである。そしてこれらの植物には他の植物では見られないような、稀なあるいは新規のフラボノイドが多量に含まれている。ヒマラヤの植物も研究を行った。そのひとつがセイタカダイオウである。この植物はヒマラヤの標高4000m前後に生育するタデ科の植物で、半透明の苞葉に被われた高さ1・0m前後の花茎を持っており、それに多くの花をつけている。この苞葉は光を通すので内部は暖かく、高山の寒さから花を守っているので、“温室植物”と呼ばれている。“セーター植物”や“クッション植物”とならんでヒマラヤを中心とした高山の三大適応形質といわれる。ところがこの半透明の苞葉を調査すると、可視光は通すが紫外線はまったく透過しないこともわかった。そこでこの苞葉を分析したところ、紫外域に大きな吸収帯をもつ5種類の化合物が多量に含まれていることがわかり、これらを同定した結果、いずれもクェルセチンと呼ばれるフラボノイドの仲間である事が判明した。しかもこのうちのひとつはこれまで自然界で報告のない新規の成分であった。これらは太陽光から特異的に紫外線だけを吸収し、内部の花を低温だけでなく、紫外線からも保護している“天然のパラソル”である事がわかった。

オオバコは広くは“雑草”の範疇に入る草本だが、種子に粘りがあり、靴やタイヤにくっついて生育 分布を広げる。長野県と岐阜県の県境にある乗鞍岳は車道が標高2900m付近まで通じており、それに沿って標高2600mまでオオバコが侵入している。私が知る限り、日本で一番高いところに生えているオオバコである。このオオバコを低所(800m)から2600mまで一定間隔で採集し、フラボノイドも含むポリフェノール成分を分析したところ、その量が低所から高所に行くにしたがって徐々に増加している事が判明した。しかし高山には、紫外線だけでなく、低温、低pH、貧栄養など、さまざまな環境ストレスが存在する。そこで低地と高地のオオバコの個体を持ち帰り、人工的にこれらの条件を作り栽培したところ、紫外線と低温に対してはフラボノイドの増加が見られたが、低pHと貧栄養には感受性がない事が判明した。さらに低地と高地のオオバコの紫外線によって損傷を受けたDNAの修復能力を調査したところ、高地のオオバコのほうが低地のものに比べて、修復能力が優れている事も判明した。

高山植物はこれまで述べてきたように、高山特有の各種ストレスに適応して生育してきた。しかし近年の地球の温暖化に対して、植物の中で特にその存続が危機的な状況にあるのが高山植物である。長い年月の間に植物は、徐々に変化する生育環境に適応して、形態や内部形質としての化学成分を変化させながら対応してきた。しかしながら、近年の人類による地球環境の変化は植物の適応がついていけない速さで進行している。これに対して特に逃げ場のない高山植物にとっては、この変化は致命的である。

 

平成30年度 通常総会の開催

平成30年度通常総会を下記日程で開催いたします。ご多忙のこととは思いますが、多くの皆様のご出席をお待ちしています。

日時 平成30年6月2日(土)午後1時30分から
受付時間 午後1時から
会場 都市センターホテル(地下鉄 永田町駅9番出口から徒歩3分)
東京都千代田区平河町2丁目4-1
TEL 03-3265-8211
日程 1.総会
   平成29年度事業報告・収支決算報告
   平成30年度事業計画・収支予算案
   役員の一部改選について
   その他
2.フォトコンテスト表彰式
3.記念講演
   演題 「高山植物についての化学的多様性の解析と保全に関する研究」
   講師  村井良徳 氏(国立科学博物館植物研究部 筑波実験植物園 研究員)
問合せ先 〒400-0027 甲府市富士見一丁目3-28
NPO法人 日本高山植物保護協会事務局
TEL&FAX 055-251-6180 E-mail:info@(アットマーク)jafpa.gr.jp

※ 理事会は、午前10時から同会場で開催します。

 

高山に咲く花 (山梨県甲府市 井川 隆)

タカネビランジ
タカネビランジ ナデシコ科
花は紅色5弁花
南アルプスの高山帯に生える
ホウオウシャジン
ホウオウシャジン キキョウ科
岩場に垂れ下がって生え、葉は細長い
鳳凰三山に特産する
シナノオトギリ
シナノオトギリ オトギリソウ科
葉のふちに黒点があり、形は細い長い楕円形
亜高山帯~高山帯に生える
セリバシオガマ
セリバシオガマ ゴマノハグサ科
亜高山の針葉樹林に生える多年草
葉は対生し、深く羽状に切れ込む
コバイケイソウ
コバイケイソウ ユリ科
花は白色円錐状に集まって咲く
雪田周辺の草原に生える多年草
ホザキイチヨウラン
ホザキイチヨウラン ラン科
葉はふつう1個つくので一葉の名がある
山地〜亜高山の林のなかにみられる
 

高山植物一口メモ キバナノアツモリソウ(らん科)

キバナノアツモリソウ(写真)キバナノアツモリソウ(絵)

本州中部以北の亜高山から高山帯の山地、草原に生える多年生草本。草丈20 cm位、6月~7月に、一花をつける。花は、淡黄緑色で紫褐色の斑点がある。属名のキプリプディムは、「ヴィーナスのスリッパ」「貴婦人のスリッパ」という意味。
   この美しい花は、櫛形山に群生していて、ホテイアツモリや、アツモリソウを守るように群落に中に、隠すようにして、咲き誇っていたのが、ある時、一本残らず堀り盗られたときいて信じられない思いでした。それが、南アルプス市と、高山植物保護協会の努力により、少しづつ、復活している事を知り、嬉しさがこみあげてきました。南アルプス市と高山植物保護協会に感謝、感謝の気持ちで一杯す。ありがとうございました。心から。(絵 須田靖子、文と写真 大内京子)


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