JAFPA NEWS(会報)

JAFPA NEWS Vol.87

平成29年度高山植物フォトコンテスト最優秀賞「トウヤクリンドウ」大内京子(千葉県我孫子市)
平成29年度高山植物フォトコンテスト 最優秀賞「トウヤクリンドウ」 大内京子(千葉県我孫子市)

JAFPA 活性化のために
…先ず1 つのことから始めよう…

理事 真鍋 好煕(関西支部)

私は若い頃、近くの山や時には北アルプスの山に登っていました。その時目にしていた岩陰に色あざやかに咲いている高山植物、遠くにはアルプスの山々、そこに湧き上がる白い雲、小さな岩に腰をおろしていると、小、中学校の先生らしき人が、生徒を数名連れて登山道を登ってくるのを見かけました。近年はほとんどそういう姿は見られなくなりました。子供の頃に大自然の中で色々な体験をさせてあげられないことが寂しく思います。

そんな素晴らしい山々や高山植物が、人や動物に荒らされ目を覆うような状態になってしまった所も数多く見られます。

伊吹山山頂のお花畑もその一つです。このような状況を保護し以前の姿に少しでも近づけるためにも、JAFPAの存在が是非とも必要です。

会は平成元年に発足して以来会員数も徐々に減少し、役員の方々も高齢化し事業を進めるにもスムーズに運べないような時もあると伺っています。それでもJAFPAは活性化 に向かって今一度取り組んでいかねばならないと思います。

JAFPAの運営には会員の方々の会費収入が不可欠です。活性化するには色々方法手段はあると思いますが、先ず、第一にやるべきことは会員数を増やすことです。このこと は本部と各支部との会合を増やし多くの議論をもって進めて頂きたいものです。

私は関西支部の会員です。関西支部では数年前からなんとか会員を増やす手段は無いかと役員会で話し合っています。関西支部の会員の方々も高齢化し少しずつ減少しています。

各個人一人一人に入会を求めるのも難しく、そこである法人会員A社様の代表者に協力を頂いて社員の方多数入会していただきました。法人会員A社様の平成27年度会員数は87名になっています。

又、関西支部の行事で、春、夏の山行、秋の観察会には、以前までは参加人数が25~27名前後のことが多かったのですが、平成28年(比良山)42人、平成29年(伊吹山)47 人、平成30年(伊吹山)38人と、大幅に増えました。

このような良い例を参考に会員増強に、取り組んで頂ければよいかと思います。


高山植物についての化学的多様性の解析と保全に関する研究

国立科学博物館植物研究部(筑波実験植物園)研究員 村井 良徳

演者の勤務する筑波 実験植物園は、国立科 学博物館が植物研究を 推進するために設置し た植物園で、「植物多様 性を知る・守る・伝え る」がテーマとなってい ます。まず「知る」は、 植物の多様性について 詳しく研究して、より 深く理解することです。 次に「守る」は、日本の 野生種のおよそ4種に 1種が絶滅の危機に瀕 しているため、植物園 においてそれらの植物 の生息(生育)域外保全 を行っています。また 「伝える」は、多種多様 な生きた植物の展示や、 植物について一歩踏み 込んで知っていただく ための企画展や各種学 習支援活動などにより、 植物の面白さや魅力を 積極的に発信すること です。およそ 14 ヘクタ ール(東京ドーム約3個分)の敷地に は、日本国内の代表的な野生植物を はじめ、世界の熱帯や乾燥地に生育 する植物など、7000種類以上 が植栽されており、そのうち約 3000種類を観察することがで きます。園内は様々な植栽区画に分 けられていますが、各区画では岩山 や草原、川原など、植物の自生地の 環境を再現して植栽を行っています。 このような展示方法を生態展示と言 いますが、私たちが植物の生育環境 を体感できるうえ、植物も良好に生 育させることができます。演者の担 当区画である岩礫地植物・山地性区 画においては、日本の高山帯や亜高山帯に自生する高山植物も植栽して います。日本の代表的な植生の一つ である高山植生を形成する植物たち を来園者に知っていただくのと同時 に、低地での栽培研究も実施してい ます。園内で栽培されているその他 の植物も、展示と研究の両方に利用 されているものが多く存在します。 植物園の研究員にはそれぞれの専門 分野があり、日本のみならず世界の 様々な場所をフィールドにして、植 物の多様性に関する研究を進めてい ます。

植物の多様性と言ってもじつに 様々なものがありますが、演者が 主に研究しているのは、植物が作 る化学物質の多様性です。例えば フラボノイドと総称される物質群 は非常に多様化しており、 2006年までに8150種類が 報告されており、現在では1万種 類に及ぶと考えられています。フ ラボノイドの例としては、ブルー ベリーの果皮に蓄積されるアント シアニン類や、タマネギのクェル セチン(ケルセチン)などがありま すが、これらの成分は抗酸化作用 をはじめとする生理活性をもつた め、ヒトの健康に寄与する成分と して近年注目されています。また これらの成分を作り出している植 物体内でも、様々な環境要因によ り引き起こされる酸化ストレスに 対する抗酸化作用は重要と考えら えますが、それ以外にも、花色の 発現やネクターガイド(蜜標)、紫 外線防御、ファイトアレキシン(抗 菌作用)などの様々な機能が知られ ています。これらの機能は、各種 植物がそれぞれの環境に適応する 際にも重要であったと考えられま す。またフラボノイドと合成経路 の一部が共通のケイ皮酸誘導体に は、例えばコーヒーの機能性成分 として知られるクロロゲン酸など がありますが、フラボノイドとと もにポリフェノールと総称されま す。現在演者は、高山植物におけ るこれらの化学物質の分布と機能 について調査をしています。まず 本州中部から北海道まで広く分布 する種(ミヤマダイコンソウ、チン グルマ、チシマギキョウ、イワギキョウなど)を中心に、さらに最近 では日本固有種(ナンブトウウチソ ウ、ハヤチネウスユキソウなど) についても分析を進めていますが、 これまでに研究に利用した高山植 物では、抗酸化能力の高い紫外線 防御物質を多量に蓄積するという 共通の傾向が見られています。具 体的な成分としては、フラボノイ ドではクェルセチンやルテオリンの配糖体、ケイ皮酸誘導体ではク ロロゲン酸などです。高所で増加 する紫外線をはじめとする厳しい 環境ストレスにさらされる植物に、 このような機能性成分が蓄積して いることは合理的と考えられます が、前述の植物種以外でも同様の 傾向が見られるのかについては、 調査が進行中です。

高山植物の調査を重点的に実施 しているのは「生物多様性ホットス ポット」と呼ばれる地域です。国際 NGOのコンサベーション・イン ターナショナルが、多様な固有の 維管束植物が生息する一方で原生 の生態系が大きく改変されてしま った、世界の 36 地域を選定してお り(2017年時点)、日本もその 1地域に該当します。それでは日 本国内のどこに固有種が多いのか という観点から、国立科学博物館 の総合研究によって、国内の生物 多様性ホットスポット地域が選定 されましたが、小笠原諸島や屋久 島などの島嶼とともに、夕張岳や 北岳をはじめとする多数の山岳地 域が上位に入る結果となりました。 さらにこのような地域には、固 有種とともに絶滅危惧種も多いこ とが分かっており、速やかに各植 物種の生物学的特性が理解される ことが望まれます。そこで、植物 園における生息域外保全のための 栽培実験(園内の植栽区画や圃場、 研究室内の人工気象器などで実施) も含めた様々な研究を同時並行で 進めています。特に保全に関して は、日本植物園協会の植物多様性 保全拠点園のネットワークを活用 して、他園とも協力しながら研究 を推進しています。また前述の山 岳地域は島嶼のように隔離された 環境であることや、夕張岳に見られる蛇紋岩のような塩基性岩を基 岩とする特殊な土壌が高い生物多 様性をもつ地域の形成に関わった 可能性もあるため、どのようにして国内の生物多様性ホットスポッ ト地域が形成されたのかという歴 史的な背景についても、様々な角 度から研究が行われています。

高山植物の素晴らしい多様性や、 それを取りまく危機的な状況など についても、一般の方に広く知っ ていただくことは重要と考えてい ます。筑波実験植物園では、5月 19 日(土)から 27 日(日)の9日間の 日程で、企画展「高山植物~かけが えのない高嶺の花たち~」を開催し ました。高山植物に関する初の企 画展でしたが、開催前から問い合 わせが多く関心の高さがうかがえ たほか、開催期間中に新聞やテレビなどで取り上げられたこともあ り、来場者数は事前の予想を大き く上回り大変盛況でした。「高山植 物とはそもそもどのような植物 か?」や、「どんな研究が行われて いるのか?」などについて、写真展 や解説パネルで紹介しました。ま た地球温暖化やシカによる食害、 盗掘などの影響により、高山植物 の個体数は減少して、非常に危機 的な状況であることや、貴協会の 活動に代表される市民団体や行政 の努力によって何とか高山植物の 多様性が守られていることも紹介 しました。さらに植物園で生息域 外保全をはじめとする各種研究用 に栽培されている百種類をこえる 高山植物も展示して、実際の高山 植物の多様性にも触れていただき ました。これからも、高山植物の 多様性を知る・守る・伝える活動 を、高嶺を目指す登山のように一 歩いっぽ着実に推進して行きたい と考えています。


平成29年度高山植物 フォトコンテスト入賞作品

最優秀賞「トウヤクリンドウ」大内京子(千葉県我孫子市)は、ページトップに掲載させていただきました。

レンゲショウマ
優秀賞「レンゲショウマ」
植竹史治(埼玉県狭山市)
ハクウンラン
優秀賞「ハクウンラン」
鈴木文夫(静岡県富士市)
ベニシュスラン
入選「ベニシュスラン」
鈴木文夫(静岡県富士市)
イワベンケイ
入選「イワベンケイ」
深井幾蔵(埼玉県蕨市)
オノエラン
入選「オノエラン」
村上浩二(青森県青森市)
イブキトリカブト
入選「イブキトリカブト」
大平昭善(東京都府中市)
クロユリ
入選「クロユリ」
中山厚志(長野県佐久市)
オヤマノエンドウ
入選「オヤマノエンドウ」
深井幾蔵(埼玉県蕨市)
イワギボウシ
入選「イワギボウシ」
鈴木文夫(静岡県富士市)

高山植物一口メモ クモマスミレ(すみれ科)

クモマスミレ(すみれ科)(写真)

クモマスミレは、最も高山帯に生育する種類で、砂礫地で、陽射しの強い 所に孤立する多年草で、雲の去来する所に咲くという意で命名されたという。 葉は濃緑色で、暗色を帯び厚く硬い。光沢があり円頭基部は心臓形となる。 縁辺には鋸歯がある。花は茎上につき鮮黄色、5 弁で横を向く。上二弁と側 弁は上向し、下唇弁は先端がとがり、濃褐色の筋がある。花期は7 月~8 月。
 日本ではスミレと言えば、野に咲く可憐な花を思い浮かべることでしょう 「山路きて、何やらゆかし すみれぐさ」のように。
 ところが世界では、23 属800 種のうち21 属500 種が木本、日本では、 1 属27 種、すべてが草本なのです。温帯と熱帯に分布し、南米のチリ、ア ンデスでは、乾燥に耐えるため、特殊に変化した典型的な、ロゼットタイプ のスミレが標高約3300 mのほとんど、ほかの植物の自生しない岩礫地帯に広がっています。私は、 11 月に、ロゼットヴィオラをアンデスに訪ねました。広大な瓦礫の山の中からみつけることは不可能に 思いましたが教えられて、みつけた花は、やはり可憐で美しい「スミレ」の花でした。(写真と文 大内京子)


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