JAFPA NEWS(会報)

JAFPA NEWS Vol.88

大島の日の出(宮田義之)
大島の日の出(宮田義之)

活動の輪をさらに広げ次の世代につなげていきたい

監事 早川 源

今年の夏、内館牧子著「終わった人」を読んでいるとスイスで山岳ツアーガイドをしている友人からトレッキングのお誘いが舞い込んできた。グリンデルワルト・ツェルマット・ユングフラウヨッホなど…懐かしい地名が並んでいる。

腰痛に悩まされており山登りなど果たして大丈夫かと悩みに悩んだが、あのお花畑をもう一度見ようと思い切って出かけることにした。

最初にスイスを訪れたのは35 年前、42 歳ぐらいだったろうか。男5人でドイツ、イタリア、スイス、フランス18 日間の旅であった。グリンデルワルトで革靴を脱ぎ捨て運動靴を買って標高2200m のフィルストへ、今井通子さんが登頂したアイガー北壁を正面にして一面のお花畑、紺碧の空、のんびりと草を食む牛の群れ、その光景は今でも鮮明に浮かんでくる。グリンデルワルトでは運よくペンションを経営している日本人写真家中島さんに巡り合うことができ、夜遅くまでワインを楽しみながら地域づくりについて語り合うことができた。景観を守るため様々な条例があること、例えば、ホテルを建設するというと規模に合わせて乳牛を飼うことが義務付けられているという。

さて、今回のトレッキングはツェルマット、シーニゲ・プラッテ、グリンデルワルトをベースに連日山登り、山小屋に泊まるという私にとってはかなりの強行軍であったが、35 年前と同じようにお花畑にマーモットが走り回って迎えてくれ何とか歩き通すことができた。

日本高山植物保護協会(JAFPA)は発足して30年になる。高山植物保護思想の啓蒙活動、南アルプスのキタダケソウの監視、高山植物観察山行も毎年続けられてきた。アポイ、栂池高原、尾瀬ヶ原、乗鞍、伊吹山、日光白根山などの山行には私も参加させていただいた。

山梨から始まったこの活動は全国へとネットワークが広がってきたが、一方、高齢化の波は避けて通れず、会員数は減少ぎみである。皆さんのご尽力により活動の輪をさらに広げ次の世代につなげていきたいものである。

 


霧ヶ峰草原再生 協議会の活動について

1.経緯

霧ヶ峰は全国でも有数の美しい草原景観を有する場所ですが、この草原は古くから人が採草などで利用することにより維持されてきました。しかし、近年はそうした利用がなされなくなり、森林化の進行、外来種の侵入やニホンジカの食害などにより、霧ヶ峰の草原環境が脅かされています。

そのため、霧ヶ峰に関わる団体の代表者が集まり、霧ヶ峰の保護と利用のあり方について総合的に協議・検討し、目指すべき霧ヶ峰の姿を描き、実現することを目指して、平成19年度に「霧ヶ峰自然環境保全協議会」が設立されました。

協議会では、平成20年度に霧ヶ峰自然環境保全の基本計画である「霧ヶ峰の今とみらい~霧ヶ峰再生のための基本計画~」を策定し、平成25年度には「霧ヶ峰自然保全再生実施計画」を策定しました。この計画は昭和30年代の霧ヶ峰の草原景観を参考に、100年後の未来にも美しい草原景観を継承していくため、生態系を改変するおそれの外来種の駆除と、多様な植物の生育を促すための優占種の刈取作業の方法等を定めたものです。

平成26年度に自然保全再生作業の運営を担う下部的組織として「霧ヶ峰草原再生協議会」を設立し、地域住民との協働により、計画に基づく自然保全再生作業を実施していますが、こうした霧ヶ峰における協議会の活動が認められ、平成30年2月に日本山岳遺産として認定されましたので、その活動状況について紹介させていただきます。

2.平成30年度の活動状況

(1)外来種の駆除作業

セイヨウタンポポ、ハルザキヤマガラシ、ヘラバヒメジョン、オオハンゴンソウなどの外来植物の駆除作業を計5回実施し、一般のボランティアの方など延べ244名に参加いただき、約4・3㌧の外来種を駆除することができました。特に、オオハンゴンソウは「特定外来生物」に指定されており、生態系に大きな影響を与えるため、複数回にわたる重点的な駆除作業を実施しています。地下茎ごと掘り取るので大変な作業ですが、在来種は残し、オオハンゴンソウだけ駆除することができました。しかし、繁殖力が強くなかなか根絶には至らないため、今後も作業を継続していく予定です。

(2)優占種の刈取作業

多様な高山植物が生育する草原環境の再生を目指して、ニッコウザサ、ススキなどの優占種の刈取作業を計3回実施し、一般のボランティアの方など延べ134名に参加いただき、約3㌶のエリアで優占種の刈取を実施することができました。また、刈り取ったススキ約4・3㌧は業者に委託し、堆肥として活用しています。こうした作業の継続により、ニッコウザサ等の優占度が下がるとともに出現種数が増加し、多様な高山植物が生育する「お花畑」の復活が見られるようになっています。

(3)電気柵等の設置

ニッコウキスゲ等の貴重な高山植物をニホンジカの食害から守るため、八島ヶ原湿原や車山肩などのニッコウキスゲの群生地に電気柵等を約15㎞設置しています。特に、車山肩では、ニホンジカの食害によりほとんど見られなくなったニッコウキスゲが、電気柵の設置と優先種であるニッコウザサの刈取を継続することにより復活し、今年度は電気柵内だけではありますが、かなりの密度でニッコウキスゲが開花し、多くの観光客の方 に楽しんでいただくことができました。このように大きな成果を上げていることから、来年度以降に電気柵の設置範囲を拡げていくことを予定しています。

3.おわりに

霧ヶ峰での作業は平成26年度から5年間継続して実施したところであり、その効果は確実に見られていますが、まだ継続的な作業が必要な状況です。今回の山岳遺産基金の認定を機に、より多くの人に霧ヶ峰の素晴らしさを知っていただくとともに、実際に美しい草原景観を見るために霧ヶ峰に訪れていただきたいと思います。また、作業の継続には資金と人手が必要となりますので、霧ヶ峰の自然環境の保全に関心のある企業・団体・個人の方は、是非ご支援をお願いします。

 


高山に咲く花 山梨県甲府市 井川 隆

ヤマブキショウマ
ヤマブキショウマ バラ科 花期6~8月
山地に生える多年草 小葉がヤマブキに 似ている。雌雄別株 写真は雄株
チシマギキョウ
チシマギキョウ キキョウ科 花期7~8月
高山帯の砂礫地に生える。花冠は長さ3 ~3.5㎝で毛があるのでイワギキョウと区 別できる。
イブキジャコウソウ
イブキジャコウソウ シソ科 花期8~9月
山地~高山帯の日当たりの草地や岩場に生える。小低木葉にさわるとよい香りがする。
イワオトギリ
イワオトギリ オトギリソウ科 花期7~8月
亜高山~高山の草地や砂礫地などに生える。葉を透かしてみると黒い点が多く見られる。
クモイコザクラ
クモイコザクラ サクラソウ科 花期6月
亜高山帯の湿った岩場に生える。花の直径は約2.5㎝
 

高山植物一口メモ コマクサ(駒草)けし科

コマクサ(駒草)(写真)

日本の高山植物の象徴であるコマクサは、その美しさゆえに、高山植物の女王と称 せられ、誰からも愛される存在です。又、花の島屋久島では、シャクナンガンピとい う紅白の愛らしい花を女王と称し、その気品と美しさを愛でているようです。定めし、 世界の花の女王といえば、それは、ヒマラヤの5300m に咲く、メコノプシス・ホリ ドウラしかないと思われるほど、青い花は、たとえようのないほど美しく、ヒマラヤ の碧空に勝っていると思われます。
日本の名花、コマクサは、北海道・本州中部・北部の高山帯の厳しい風働地の砂礫 地で根を地中深く延ばし、7月から8月頃、草丈10㎝の淡紅色の美花を開きます。
銀色の浅裂した葉が朝露に輝やく時、花・葉・姿、三拍子揃った美しさには、ためいきが出ます。北アルプスでは、 多くの群落がみられますが、中央アルプス、南アルプスの甲斐駒ケ岳では、記録と標本のみが存在するようですが、 そうかといって、自生地をはなれての播種は、自然保護のあり方を考えさせる象徴的な存在になっているようです。 燕岳における保護は、燕山荘の人達の労力によって、生き生きとした姿をみせてくれています。(写真と文 大内京子)


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