JAFPA NEWS(会報)

JAFPA NEWS Vol.89

平成30年度通常総会(都市センターホテルにて)
平成30年度通常総会(都市センターホテルにて)

JAFPA の活性化に向けて

理事 岩井 信市(昭和大学北岳支部)

私が高山植物に興味を抱いたきっかけは、中学生の生物部で行った秋田駒ヶ岳に咲いていたコマクサでした。だから、私が、山に登るのは、高山植物を観るための手段であり、目的ではありませんでした。昭和大学に入ると夏期に北岳と白馬岳に登って診療活動の手伝いをする診療部があることを知りました。2 つの部活は、別組織なのでどちらかを選ばなければいけなかったので、北岳を選びました。コマクサの咲く白馬岳は捨てがたかったのですが、北岳に咲くキタダケソウなどの固有種の多さに惹かれたことでした。以来、30 年ほど北岳に関わってきました。

ヒトの視覚は、目に入った情報をかなり加工して認識しています。だからお化けを見ることが出来るわけです。逆にいらない情報は、削除されてしまいます。高山植物に興味がない人は、認識出来ないのです。北岳支部の会員や北岳診療部の部員も講演会に参加することにより少しずつ高山植物を観ることが出来るようになっていると思います。登山者が高山植物に対する認識を上げる活動は重要だと思います。

JAFPA の会員を増やすことは重要な課題であると思います。その方策の一つとして、JAFPAの会員であることのメリットがもう少しあるといいなと思います。会員だけが入れるホームページの図鑑や写真があったり、植物園の入場料が割引になったりするといいなと思います。昭和大学北岳支部共々、微力ではありますが、支援したいと思っております。

 


日本の高山植物のルーツを探る

日本高山植物保護協会 理事 岩科 司

平成31年3月17日、昭和大学1号館7階講堂において、当会と昭和大学北岳支部の共催により、当会理事で日本植物園協会会長の岩科司氏を講師に、講演会を開催いたしました。以下はその内容です。

約7500種の植物が日本に自生

日本は、北は冷温帯の北海道から、南は亜熱帯の沖縄まで、また標高3000メートルを超える南北両アルプスから、絶海の孤島である小笠原諸島まで、さらには世界でも例を見ない、冬の積雪量が3メートルを超える日本海側の多雪地帯など、さまざまな自然環境がある。その結果として、あらゆる環境に約7500種の植物が日本に自生している。この数は、日本とほぼ同じ面積の島国であるイギリスで約1600種、ニュージーランドで約2000種であるからその多さがわかる。さらに、日本に自生している植物の約25%、すなわち4種に1種が世界で日本でだけしか見ることのできない野生植物、日本固有の植物である。しかし残念ながら、環境省のレッドデータブックに記載されている絶滅危惧植物もまた約25%、4種に1種である。

野生植物は、そのルーツをたどると4つに分けることができる

現在の日本列島に自生している野生植物は、そのルーツをたどると大きく4つに分ける事ができる。 すなわち、(1)地球が寒冷だった時代(氷河時代)に北から南下してきて、日本に定着したもの。逆に、(2)地球が温暖だった時に南から北上してきて、日本に分布を広げたもの。(3)日本がアジア大陸と陸続きだった時に、偏西風に乗って、あるいは動物などに運ばれて日本にたどり着いたもの。そして(4)意図的に、あるいは非意図的に人類によって運ばれて日本で繁殖したもの、である。

これらのうち、にほんでいわゆる“高山植物”とされる植物の多くは(1)によって分布を広げたものである。植物図鑑で、その分布が「中部地方以北の高山」と記されているものはたいていこれに相当する。(1)ほどではないが、(3)によって日本にもたらされたものも比較的多くある。これに該当するのは、もともとがヒマラヤ山脈に起源をもつものである。(1)に該当する典型的な植物は“周北極要素”と呼ばれている植物群である。本来は北極の周辺、すなわちシベリア、ヨーロッパ北部、カナダやアラスカなど、北極を中心に、そのまわりに広く分布していた植物で、多くはこれまで4回あった氷河時代のうち、7万年~1万年前頃のウルム氷期に日本に南下した。

その代表はヒオウギアヤメであり、日本には、栃木県の那須地方にその変種のナスノヒオウギアヤメ、長野県の霧が峰にキリガミネヒオウギアヤメがある。共に日本固有の植物で、絶滅が心配されている植物である。その他の周北極要素の植物として、ゴゼンタチバナやマイヅルソウ、クロユリなどがある。

代表的な日本固有の植物で、高山植物なのはシラネアオイであろう。この種に近縁な植物はこれまで不明であったが、近年、カナダからアメリカにかけて分布している同じキンポウゲ科のHydrastiscanadensis という植物であることがDNA解析によって判明している。北極付近にあったこれらの原種がそれぞれ日本とアメリカに移動して、長い年月をかけてそれぞれ独自に分化したと推定される。メギ科のサンカヨウ、ルイヨウボタンおよびナンブソウもそれぞれ、東アジアに上記の種が存在し、遠く離れて隔離的に北米大陸に別の種が存在している。

絶滅が心配されている種群

世界中で南アルプスの北岳だけに特産するキタダケソウを包含するキタダケソウ属は、北半球に10数種がある。日本にはキタダケソウ以外に、北海道のアポイ岳にヒダカソウ、同じく崕(きりぎし)岳にキリギシソウがあり、いずれも1集団のみで、極めて絶滅が心配されている種群である。とくにヒダカソウは、実をつける個体が年々減少している。その一方で、ユーラシア大陸にある種、私が見たのはキルギスおよびカザフスタンに自生するCallianthemumalataicum という種であるが、これは足の踏み場のないほどに繁茂していた。キタダケソウはおそらく、このような場所から長い距離を移動してきて、日本に分布を伸ばし、北岳に取り残されて分化した種だと思われる。

ユリ科(APGⅢではサクライソウ科)のオゼソウも日本固有の植物である。この種は尾瀬ヶ原の西にある至仏山で最初に発見され、その後、谷川岳と北海道の天塩山地でも発見された。いずれも植物の生育にとってストレスのかかる蛇紋岩を基盤とした山である。この起源については今のところ、よくわかっていない。高山植物としてよく見かけるイワギキョウやチシマギキョウ、トウヤクリンドウなども寒い時代に日本に南下してきて、本州の高山に取り残された植物である。またネギの仲間のシロウマアサツキ、スミレ科のキバナノコマノツメやタカネスミレなどもまた同様である。

日本の高山帯でよく見かけるハクサンコザクラなどのサクラソウの仲間、ヨツバシオガマやタカネシオガマのようなシオガマギク属植物、それにハクサンシャクナゲやキバナシャクナゲのようなシャクナゲ類は、極めて多くの種がヒマラヤ山脈とその周辺地域に自生しているので、その起源はいずれもヒマラヤ山脈であろう。

以上のように、日本で高山植物といわれるものはたいてい(1)と(3)のルーツを経て日本に到達したと考えられる。地球が温暖だった時に南から北上してきて日本に定着した植物には高山植物はほとんどない。多くの種は海流散布、すなわち果実や種子が水に浮き、海流に乗って日本に到達したものが多い。したがって海辺にある植物が多い。マメ科のハマナタマメやハマエンドウ、ヒルガオ科のハマヒルガオやグンバイヒルガオなどである。本州までは至らず、日本では沖縄だけに自生する植物も多い。ゴバンノアシ、ナガミカズラなどである。

上記以外に、(4)意図的に、あるいは非意図的に人類によって日本にもたらされた植物もある。いわゆる帰化植物である。これらのうち、例えば、オオハンゴンソウ、オオキンケイギク、セイタカアワダチソウ、アレチウリなど、現在の日本において自然環境の破壊の元凶となっている植物もある。

温暖化の影響を最も受けているのが高山植物

今日地球では、人類による環境の破壊によってもたらされた温暖化の影響によって、多くの植物が絶滅の危機にさらされている。そのなかで最も影響を受けているのが高山植物である。これらの植物はもともと暑さに弱い性質がある。氷河時代が終了し、間氷期にはいると、これらの植物は暑さを避け、高山帯に分布を移動させ、現在は高山の山頂付近に自生している。このまま温暖化が進行すると、もともと山頂付近に生育している植物は逃げ場を失い、やがて消滅する。

 


高山に咲く花 山梨県甲府市 井川 隆

ヤマガラシ
ヤマガラシ アブラナ科 花期6~7月
山地帯へ高山帯の湿った沢筋の礫地や
草地に生える高さ15~50㎝の多年草
ミヤマハナシノブ
ミヤマハナシノブ ハナシノブ科 花期7~8月
亜高山帯の林緑や草地に生える多年草
茎の高さ30~80㎝になり上部に線毛と細毛がある
タカネシオガマ
タカネシオガマ ゴマノハグサ科 花期7~9月
高山帯の砂礫地や草原に生える1年草で
高さ10~20㎝位になる
ミヤマミミナグサ
ミヤマミミナグサ アブラナ科 花期7~8月
亜高山帯~高山帯の礫地や岩場に生える多年草
花弁は2裂し裂片がさらに2―3裂する
ミネウスユキソウ
ミネウスユキソウ キク科 花期7~8月
本州中部の高山帯に多く見られ乾燥した草地や
礫地に生える多年草
タカネイブキボウフウ
タカネイブキボウフウ セリ科 花期7~8月
山地帯~亜高山帯の砂礫地や
草原に生える多年草

高山植物一口メモ コバイケイソウ(小梅蕙草)ユリ科

コバイケイソウ(小梅蕙草)(写真)

草丈が、50㎝~1m にもなる。日本特産の高山植物コバイケイソウは、本州中部以北の高山帯、日当たりの良い少し湿った草地、雪田などに時として、大群落をつくる。
夏山のシンボル的存在のコバイケイソウは、山の稜線に林立し、白馬岳、栂池、三俣蓮華、大郭平等々の山々を、思い出深い山にしてくれます。
葉は緑で、7 月頃、茎の先に総状花房をつけ、中央の大きな穂の下には、4~5 の短い穂があって沢山の白い花をつける。根茎は有毒、アルカロイドを含む。
この花も、毎年、素晴らしい光景を見せてくれるわけではなく数年に1 度で、あの群落はどこへ?という年もあります。高山植物は、いつも一期一会だと思われます。
写真は鳥海山から日本海に沈む夕陽を受けて輝やくコバイケイソウの花を撮ったもので、花穂を夕陽と重ね たくて、斜面に寝転んで、ただひたすらにのぞいたレンズに写ったコバイケイソウが、懐かしく思い出される 一枚です。(写真と文 大内京子)


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